『東京都美術館ものがたり』展を見る


 上野の東京都美術館が改装をし、リニューアルオープン記念として『東京都美術館ものがたり』という企画展を開いている(9月30日まで)。副題が「時代を駆けぬけた芸術家たち」というもの。ちらしには佐伯祐三梅原龍三郎藤田嗣治赤瀬川原平舟越桂など錚々たる名前が並んでいる。しかも無料。そのちらしから、

この展覧会では、近現代の「ニッポン・アート史ダイジェスト」として、美術館を舞台に活躍した作家を紹介します。また、生みの親ともいうべき実業家・佐藤慶太郎、旧館・新館を設計した建築家の岡田信一郎前川國男など、ゆかりの人たちにも光を当て、この美術館の生い立ちを紹介します。(後略)

 実際の展示は、旧館の設立の経緯や新館の模型などにスペースの半分以上を費やし、美術作品の展示はあっけないほど少なかった。ただ、見て良かったものもある。藤田嗣治の「十二月八日の真珠湾」は日米開戦時の真珠湾の戦いを描いた大作で、私は初めて見た。
 もう一つ驚いたのが赤瀬川原平の大きな作品、布団のようなレリーフ様の作品で中心に金属が取り付けられている。最初見たときに荒川修作かと思ったのだった。
 そして南嶌金平の作品が並んでいるのにも驚いた。この画家とは20年前に名刺を交換したことがある。飯田市の地方画家だ。有名画家たちに混ざってなぜこの画家が? 各画家たちは、「院展と片岡珠子」とか「文展朝倉文夫」「二科会東郷青児」「東京展と寺山修司」などテーマを代表して選ばれている。南嶌は「一水会と南嶌金平」という位置づけで、これは数多くの公募展を代表して一水会が選ばれ、それらの公募画家を代表して南嶌が選ばれたということのようだ。南嶌は一水会に毎年応募し落選し続けていた。それがようやく晩年になって入選を果たしたのだという。東京都美術館はそのような方たちにも支えられてきましたからと係の人が言っていた。南嶌の名刺の肩書きは「一水会会友・信州美術会会員」となっていた。長野県飯田市を基盤とする南信美術会の指導者でもあったと思う。
 なお藤田の「十二月八日の真珠湾」は展示替えのため8月19日までの展示となる。
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上左が佐伯祐三、上右が梅原龍三郎、下左が東郷青児、下右が岡本太郎

上左が「天井桟敷」公演、上右が赤瀬川原平、下左が舟越桂、下右が日比野克彦
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東京都美術館ものがたり」
2012年7月15日(日)→9月30日(日)
9:30→17:30(金曜日は20:00まで)月曜休館、9/18も休館