フェルメールはユトリロ?

 フェルメールばやりだ。フェルメールが1点含まれていれば○○○美術館展に行列ができる。突然のこのブームは何なんだろう。たまたま会ったさとうさんに、そのことを質問した。さとうさんは抽象画を描いている。彼女の答えはなんとユトリロよ、というものだった。昔ユトリロがすごく人気があったでしょ、それがフェルメールに替わっただけなのよ。なるほど。
 そういえば半年ほど前、養清堂画廊で個展を開いていたアメリカ在住の画家も似たことを言っていた。日本で流行っているあの画家って何なの? と聞いてきた。彼女はVermeerの発音も知らなかった。アメリカではこの画家のこと誰も知らないわよ。
 今回上野の東京都美術館で開かれている「マウリッツハウス美術館展」にはフェルメールの「真珠の首飾りの少女」が展示されており、それを宣伝するためにタレントの武井咲がその絵の少女に扮している広告があった。フェルメールではなく、この広告の企画を考えた広告代理店に対してバッカじゃねえのと思った。フェルメールの作品を美少女を見るのと同じと思っているんだろうか。行列を作っている観客はフェルメールの描いた美少女を見たがっているんだろうか。
 ユトリロだって悪い画家ではない。同じようにフェルメールが悪い画家と言うつもりは全くない。大騒ぎをしてたった1点か2点を見るために行列するつもりになれないだけだ。行列している時間があれば、世の中にはほかに見たい作品がたくさんあるのだから。