阪田寛夫『庄野潤三ノート』を読む

 阪田寛夫庄野潤三ノート』(講談社文芸文庫)を読む。阪田は宝塚のスター大浦みずきの父で芥川賞受賞の小説家、童謡「さっちゃん」の作詞家でもある。娘の内藤啓子が『枕詞はサッちゃん』で父・阪田寛夫の人生を書いている。それは最近エッセイスト・クラブ賞を受賞した。それによると阪田は庄野潤三をほとんど崇拝していた節がある。家族は阪田が庄野のために奔走しだすと、「ああ、またオジサンの『庄野大明神』が始まったよ」とため息をついていた。庄野は阪田にとって学校の先輩であり、職場(朝日放送)の上司だった。文学においても強い影響を受けている。
 『庄野潤三ノート』は、講談社刊行の『庄野潤三全集』の各巻末に連載のような形で収められたのをまとめて単行本にしたものだ。しかし、その単行本は講談社ではなく冬樹社から発行されている。講談社は売れないと思ったのだろうか。
 執筆に当たって阪田は、

 私がひとり閉じこもって書いたのではなく、講談社のお世話で毎月一度録音機とノートを携えて庄野さんに逢い、全集一巻ごとの作品について、書いた時の事情や今の気持などを聞かせてもらった。(……)そういうことを10回続けて、その上に、丹念に貼ってある古いスクラップ・ブックや未発表の小説など、大切な資料をいくつも貸してもらった。そのほか20数年間のつきあいと、その前に間接に知っていた子供の頃からの記憶やメモ類を総動員した。

 そんなわけで、庄野の作品一つ一つについて、異常に詳しい解説が書かれることになった。庄野は第三の新人の一人とされ、しかし私小説的な作風で、私も1冊くらい読んでいるはずだがほとんど記憶にない。第三の新人たちの中でも特に地味な作家ではないか。
 そのような書き方なので、庄野文学全体をとらえて〜である、とは書かれない。細部に細部にこだわった書き方で最後まで続いている。内藤啓子につられて阪田寛夫を読んだが、この後庄野潤三を読む気にはなれなかった。彼の兄貴にあたる庄野英二の『星の牧場』という子供向けの小説は愛読したのだったが。



星の牧場 (理論社名作の森)

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枕詞はサッちゃん: 照れやな詩人、父・阪田寛夫の人生

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