フォトエージェンシーの写真

 フォトエージェンシーと呼ばれる類の会社がある。カメラマンたちから作品(写真)を預かり管理する会社だ。その写真をストックフォトとも言う。広告代理店やデザインプロダクション、出版社や編集者が写真を借りに行く。だいたいが季節はずれに制作をするので、取材できないことがしばしばある。または取材費が少ないときに手軽に写真を揃えることができる。総合フォトエージェンシーから始まって、植物、スポーツ、民俗、食品、子供、人物など専門分野に特化しているフォトエージェンシーも多い。
 当然「良い」写真が揃っているが、こんな写真が? というつまらないものもストックされている。実はポスターや雑誌のグラビアページのバックに使われる写真なのだ。たとえば北海道の富良野のただ広いだけの畑が写っている。これは使い勝手が良いのだ。どこにでも文字が乗せられる。ディザイナーに喜ばれる。その反対なのが北海道に写真の個人美術館まである前田真三の写真だ。構図が完璧で隙がない。写真作品なのだ。カレンダーには最適だが、キャッチフレーズや商品ロゴなど文字を重ねることができない。つまり使い勝手の悪い写真なのだ。
 フォトエージェンシー専門のカメラマンがいる。意外と稼いでいるらしい。独自の撮影ポイントを押さえていて、他人に決して教えない。新茶の茶畑の向こうを新幹線が走り抜ける場所とか。