角田光代「三面記事小説」を読む

三面記事小説
 角田光代「三面記事小説」(文芸春秋)を読む。新聞の三面記事を元に6つの短編小説を書いている。小さな記事から豊かな物語が構築されているのは事実だ。しかしながら……
 26年前に同僚の教師を殺して自宅の床下に埋めたが、区画整理で発覚することを恐れて自首した事件。不倫相手の妻の殺害を依頼して1,500万円支払ったのに半年たっても殺人が実行されなくて、だまされたのではないかと警察に相談した事件。16歳の男子高校生にみだらな行為を3週間近く続けていて逮捕された38歳の女。
 このような卑小で暗い事件が肉付けされて綴られる。そのままの卑小さで短編小説に仕立て上げられている。その手法、作劇術は見事なのだ。だが読んでいて嫌になってしまう。なぜこんな話を読まなければならないのかと。三面記事を元にしたからいけないのではない。トルストイの「アンナ・カレーニナ」だって三面記事を元にしているのだ。おそらく作家の世界観の問題ではないだろうか。