『スロウ・ハンド』を読む

 ミシェル・スラング=編/中谷ハルナ=訳『スロウ・ハンド』(角川書店)を読む。どうしてこれを読む気になったのか、もう分からない。ほぼ20年前に翻訳出版されたもの。Amazonで購入した。編者は女性のための女性の手によるエロチックな小説を集めたという。題名の由来を「編者のことば」で彼女はこう書く。

 ここに集めたさまざまな作品を選ぶにあたって、わたしが何よりも求めたのは、10年ほど前、ポインター・シスターズのある曲――女性のための聖歌と言っていい――を聞いたときに、わたしが知っているすべての女性が持った認識を引き出すことだった。ご存知のように、この本のタイトル”スロウ・ハンド”はその曲名である。聞いたことも、ハミングしたこともない、という読者のために説明すると、”たっぷり時間をかけ”、”優しく触れてくれる”恋人、機械的に体の一部をこすりつけるのではなく、たっぷりとじらして、徐々につのる感覚を大切にしてくれる恋人に出会った、というのが曲の内容である。……

 スラングが選んだ8人の女性作家の8つのエロチックな短篇小説が載っている。やはり「編者のことば」で、知り合いの男性に読ませたら、彼はおずおずとこう言った、「僕はあんまり興奮しないけれど、なかなか勉強になると思うよ」と。それは私の感想ととても近いものだ。
 それにしても女性がこんなにエロチックなことを考えているなんて知らなかった。あなたその年で何言ってんの! 女性のことちっともわかってないじゃん。すると、山口百恵の歌った「プレイバックpart 2」を思い出す。


 坊や、いったい何を教わって来たの
 私だって、私だって、疲れるわ

 収録されている短篇の著者とタイトルを記す。
 サビーナ・フェイ「マンゴーの木」
 バーバラ・ガウディー「9300万マイルのかなた」
 リサ・タトル「NO夫人の物語」
 ジェニー・ディスキ「跳び屋」
 ウェンディー・ロウ‐ヨン「かわき」
 キャロリン・バンクス「みだらな少女」
 キャロル・ラザーレ「薔薇の小道」
 レベッカ・バトル「夜のごちそう」
 男の肌に対するフェティシズム、露出癖、3P、レズ、女性主導のセックス、性の目覚め等々が語られている。もしかしたら、私だって30年前なら激しく興奮したかもしれないが……。



スロウ・ハンド (角川文庫)

スロウ・ハンド (角川文庫)