『コンセプトのつくり方』を読んで

 山田壮夫『コンセプトのつくり方』(朝日新聞出版)を読む。副題が「たとえば商品開発にも役立つ電通の発想法」とあり、新刊案内にも「電通のクリエイティブ・ディレクターが明かす、実践的クリエイティブ発想法。ロジカル・シンキングにも代わる、新しい思考の方法論を解説する」とある。
 広告業界の商品開発の手法を教えてくれていて、なるほどさすが電通と感心した。私も10年近く前には似たような業界にいたけれど、今では派遣社員に近い仕事をしているのでほとんど縁がない世界になってしまった。ではなぜ読んだのか、身近にあってたまたま時間があったからだ。ほぼ1時間くらいで読んでしまった。
 本書は新書判の体裁だが一応ハードカバーとなっている。本文の体裁は1行35字詰め、1ページ13行、総ページ数143ページだが、図版と写真が24.5ページ分ある。400字詰め原稿用紙に換算すると135枚の分量になる。文字の大きさは写植文字なら15級、活字で10.5ポイントくらいと割合大きい。
 岩波新書の『蘇我氏の古代』の字詰なら90ページ足らずになってしまう。短時間で読めたのも道理だ。しかし、この内容なら日経新書あたりの方が向いているような気もするが、電通マンである著者が朝日新聞出版を選んだのは理由があるのだろう。コンセプトを語っているが、専門の広告マン向けというよりむしろ一般向けと考えているのではないか。そうすると専門家向けの日経新書よりこちらの方が合っているのかもしれない。
 一般の人が商品開発をもし考えるのならまさに適当な参考書かもしれない。私だってずいぶんと勉強になった。ちょっとだけ広告の仕事をやってみたいと思ったほどだ。