認識の到来について

 京橋の画廊の前を通りかかったとき、画廊の奥に黄色と黒のはっきりした色彩が目に入った。一瞬の後それが壁に掛けられた絵で、壁らしき黄色と黒、それに黄色い花が描かれていることが分かった。それが分かると同時に画家がカトランであることも確信した。頭の中で黄色と黒の色彩が壁や花という秩序を持つと同時にカトランの絵だと分かったのだ。自分の感覚では、「色彩→室内の花→カトランの絵」という経時的な認識ではなく、「色彩→室内の花=カトランの絵」という感じだった。室内の花とカトランの絵はほとんど同時的に到来した認識のように感じられた。
 私は何が言いたいのだろう。認識は一挙に到来するのではないかということだ。
 写真はそのカトラン「黒と黄の静物」だ。カトランは人気がある画家だが、決して優れた画家ではない。大衆化したマチスといったところか。ローランサンといい勝負だろう。画商にとってはすばらしい画家だろうが。