ASK?で中村恭子展「首を擡げたアルシブラ」を見る

 東京京橋のアートスペースkimura ASK?で中村恭子展「首を擡げたアルシブラ」が開かれている(2月27日まで)。中村は長野県下諏訪町生まれ、東京芸術大学大学院美術研究科美術専攻日本画研究領域博士課程修了、博士(美術)を2010年3月に取得している。その後、早稲田大学理工学術院博士研究員、京都造形芸術大学芸術教養研究センター非常勤講師を経て、現在東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所特任研究員で日本画家という才媛。2010年と2012年に同じこのASK?で2人展を開いている。
 個展タイトルの「アルシブラ」について中村が書く。

アルシブラ(Archibras)−−/シャルル・フーリエによれば/訪れる未来の結合調和の時代に/この奇妙な尻尾が/人の身に備わるとされる。
作品が、アルシブラとして/跳躍の秘儀を尾骶骨に発して/わずかに首を擡げた気持ちに/なることがある。




 画廊の正面に大きな作品が展示されている。10頭のカワウソが乱舞している。訊けば上野動物園に通ってコツメカワウソをスケッチしたものから制作したという。私も以前上野動物園カナダカワウソの撮影を試みたことがあるが、カワウソは終始泳ぎ回り走り回り静止することがほとんどない。スケッチするといっても撮影するのも大変だったことだろう。カワウソの生態的な姿を描いた作品はほとんどないと思う。小林敬生が繰り返し書いている版画作品のカワウソは静止しているし、おそらく春草のカワウソの絵を下絵にしているのではないか。そういう意味で中村のカワウソは初めて描かれたものだろう。
 その他北極熊を描いた屏風や動画、巻物の下絵までが展示されている。画廊の一隅には月の輪熊の毛皮が置かれていた。訊けば熊の爪など細部を確認するために購入したのだという。才媛の描く動物の生態的な日本画というのはなかなか興味深いものだと思った。元「ニホンカワウソ友の会」会員の娘の父親としてはカワウソを描いた絵に非常な関心をかき立てられてしまう。でも面白かったのも事実なのだ。
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中村恭子展「首を擡げたアルシブラ」
2016年2月15日(月)〜2月27日(土)
11:30〜19:00(最終日17:00まで)日曜休廊
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アートスペースkimura ASK?
東京都中央区京橋3-6-5 木邑ビル2F
電話03-5524-0771
http://www.kb-net.com/ask