野沢二郎展が始まった!

 毎年楽しみにしている野沢二郎展が今年も銀座のコバヤシ画廊で始まった(10月30日まで)。野沢は今年52歳になるという。現代の抽象の作家としてまぎれもない中堅だ。毎年安定した、しかも徐々に深化した仕事を見せてくれる。ところが今年は少し違っていた。今まで野沢では見たことのない緑色が使われている。それが昨年までの仕事の延長上に現れているのだ。いつもの野沢の静かで緊密な画面が、そのことは変わらず華やかになっている。野沢の抽象は純粋な平面ではなく奥行きがある。以前も書いたことだが、抽象の向こうにタルコフスキーの水のシーンが透けて見えるようだ。
 しばらく絵が描けない時期があり、その時絵の具で遊んでいたら緑色が使いたくなったという。山本弘も30代前半に脳血栓を患い、その後絵が全く変わってすばらしくなった。作家にとって、肉体や精神の危機はしばしば大きな転機をもたらすことがあると言いうるのだろうか。
 写真は野沢の微妙な色彩や筆触を伝えていない。ぜひ画廊に足を運んで実際の作品を見てほしい。優れた抽象作品が生まれているのに立ち会えるはずだ。





野沢二郎展
2010年10月25日(月)〜10月30日(土)
11:30〜19:00(最終日〜17:00)


コバヤシ画廊
東京都中央区銀座3-8-12 ヤマトビルB1
電話03-3561-0515
http://www.gallerykobayashi.jp/