児島善三郎の花の絵

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児島善三郎

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児島善三郎


 みずほ信託銀行に派遣で働いていたことがある。金庫の管理をしていた。金庫といっても現金ではなく有価証券を保管している金庫だった。銀行の入口は1階にあって、通常の顧客が出入りしていた。そこには外国の作家の版画が飾られていたが、作品としては平凡なものだった。後日経理の人からあの版画5万円くらいだったと聞いた。銀行は地下に専用の駐車場があり、社用車や自家用車で来店する顧客は地下駐車場から直接地下にある入口を通って来店した。その地下の受付には小島善三郎の虞美人草の10号くらいの油絵が飾られていた。その虞美人草の絵はとても良いものだった。

 児島善三郎はフランスへの留学経験があり、フォービスムに学び、独立美術協会の創立にも加わっている。戦後も大変人気のある画家だった。テーブルに置かれた花瓶に生けられた花の絵をたくさん描いている。その絵の花の種類や構図が画一的ではなく、創造性に富んだものだった。

 小島善三郎の孫が経営する国分寺の兒嶋画廊では児島善三郎のカタログレゾネを作っている。そこにもたくさんの花瓶に生けられた花の絵が収録されている。なぜかみずほ信託銀行に展示されている虞美人草の作品は掲載されていなかった。児島は花の絵でも多様な表現をしているが、この虞美人草の作品は際立って優れたものだった。

 なるほど同じ作家でも良いものも悪いものもあることがよく分かった。しかし、売れるからと同じような作品を量産した画家たち、赤富士の横山操、抽象の難波田、ひまわりの中川などと比べて、児島の創造性が目立ったのだった。

 なお、掲載した花の絵は児島善三郎だが、言及した虞美人草の図版はない。