猫の絵は難しい

 最初に言ってしまうが、猫の絵は難しい。藤田嗣治は別として、どうしても可愛く描いてしまうから絵としてイマイチになってしまう。ほとんどの猫の絵は気に入らない。

 そんな中で二人の画家を推薦する。なぜか二人とも銅版画家だ。まず佐藤恵美さん。彼女の描く猫はすべて野良猫やよその猫、自分では飼っていないのだ。じっと見て描いている。可愛いメガネで曇っていない。

 もう一人は小林真理さん。彼女の描く猫は皆変だ。スズランの花の代わりに子猫がたくさんぶら下がっている。足の代わりに車が付いている。自由学園の明日館で個展をしたときは明日館の建物が猫になっていた。
 小林真理はもう一つ面白い特徴があって、自分だけが分かる不思議な言葉を発明している。他人は解読できない。誰にも教えないそうだ。その言葉だけの銅版画作品もある。いったい何が書いてあるのだろう。私は猫とおばあちゃんに育てられたからと言っていたのが印象的だった。
 (上が佐藤恵美、下が小林真理