銀座月光荘画の芯明展

 銀座月光荘画室で芯明展が始まった(10月2日まで)。芯明Shinmingは1978年中国広州生まれ、15歳まで中国で過ごしている。2003年から3年間、銀座と京橋の小野画廊で6回個展を開いている。数年ぶりに昨年からギャラリー志門のグループ展に参加しているが、個展は6年ぶりだ。
 今回の個展では油彩で牡丹の花を描いている。牡丹は中国の国花だという。油彩とはいえ、やはり中国の伝統的な華やかな牡丹の絵を重ねて見てしまう。日本人画家が海外で発表したときに、日本の伝統の絵と重ねて見られてしまうのと同じなのだろう。




 逆にそれを主張したのが村上隆だ。以前東京都現代美術館村上隆展が開かれた折り、その講堂で村上の講演があった。押江守がアニメで爆発のシーンを描いたのがスピルバーグなどに高く評価され、ハリウッド映画等に大きな影響を与えた。押江にそれができたのは、日本人は狩野派琳派、南画などに囲まれてきたからだ。松や梅の折れ曲がった枝の絵を見て育ったから押江の爆発のシーンができたのだ。その伝統はぼく(村上)にも引き継がれていると言って、ギザギザの稲妻のようなドローイングを描いて見せ、これがそうですと言えばアメリカでは売れるのだと豪語した。
 村上隆の例は、アメリカではプレゼンテーションが大事なのだということを言っているにだけだ。しかし、育った国の伝統と重ねて見られることは、それが良いにしろ悪いにしろ避けることはできないということなのだろう。
 芯明は数年前の個展では、画廊にフロッピーディスクを多数並べたり、タイムカード型の金属片を数百枚吊したりというインスタレーションをしていた。当時始まっていた派遣労働を表現していたのだという。牡丹の見事な絵画の裏に、こうしたインスタレーションがあったことを知っているから、単純な絵師とは思えない。芯明の牡丹の後ろには、中国絵画の伝統と社会への鋭い批判精神が隠されているのだろう。
 これらの油彩の牡丹図は、源頼朝像を油彩で再現した山口晃をちょっとだけ連想する。
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芯明展
2011年9月26日(月)〜10月2日(日)
11:00〜19:00(最終日16:00まで)
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銀座月光荘画室
東京都中央区銀座8-7-2 永寿ビルB1
電話03-3572-5605
銀座の中央通りに面した資生堂ビルと資生堂ザ・ギンザの間の花椿通りを入り、2ブロック先の左手地下。