千葉市美術館で「大・タイガー立石展」が開かれている(7月4日まで)。タイガー立石はいくつか作品も見ていたし、概略知っている気がしていて、千葉市まで遠いし見に行く予定はなかった。それが6月20日の「NHK日曜美術館」を見て、思っていたよりずっと興味深い作家だと、急遽見に行くことにした。
美術館のホームページから、
絵画、陶彫、マンガ、絵本、イラストなどのジャンルを縦横無尽に横断しながら独創的な世界を展開した立石紘一、ことタイガー立石、こと立石大河亞(1941-98)。
1941年、九州・筑豊の伊田町(現・福岡県田川市)に生まれた立石は、大学進学のために上京。63年の「読売アンデパンダン」展でデビューし、翌年には中村宏(1932年生)と「観光芸術研究所」を結成。時代や社会を象徴する人物やイメージなどを多彩に引用して描かれたその作品は、和製ポップ・アートのさきがけとして注目を集めました。65年からは漫画も描きはじめ、「タイガー立石」のペンネームで雑誌や新聞にナンセンス漫画の連載をもつまでになります。60年代末から多くの子どもたちが口にした「ニャロメ」ということばは赤塚不二夫(1935-2008)と交流があった彼の造語でした。
マンガの制作が多忙になった1969年3月、ミラノに移住。のべ13年にわたるミラノ時代は、マンガからヒントを得たコマ割り絵画を精力的に制作する一方、デザイナーや建築家とのコラボレーションで数多くのイラストやデザイン、宣伝広告などを手がけています。
赤塚不二夫が立石から影響を受けていたとは知らなかった。イタリアへ移住して、駒割り絵画を作ったり、イラストレーターとして成功したりしたが、それらすべてを捨てて帰国する。帰国して数年で昭和が終り、平成になって明治を描いた「明治青雲高雲」、大正を描いた「大正伍萬浪漫」、昭和を描いた「昭和素敵大敵」を描き上げる。多彩な作風を誇ったが、代表作とすればこの大作3点になるかもしれない。
ユニークな発想のイラストを描いたり、同じくユニークなシュルレアリスム絵画を作ったりして、極めて特異な作家だった。立石は似た作家といえば中村宏かな、と思われるがユニークさでは群を抜いていた。
やはり回顧展を見ると作家についてよく分かる。優れた作家だが、あくまで傍流であって主流ではなかった。大木は枝葉が充実していて大木と言える。「この~木、何の木」のCMのように枝葉が充実していてこそ大木なのだ。傍流が充実していなければ豊かな美術の歴史は完成しない。だからタイガー立石の存在を貶めて言っているわけではない。
千葉市美術館は、なかなか他の美術館が取り上げない作家の個展を企画して素晴らしいと思う。
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大・タイガー立石展
2021年4月10日(土)―7月4日(日)
10:00-18:00(金・土曜日は20:00まで)5/6、5/24、6/7休館日
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千葉市美術館
千葉市中央区中央3-10-8
電話043-221-2311