銀座メゾンエルメス フォーラムのマチュウ・コプランによる展覧会「エキシビジョン・カッティングス」を見る

 東京銀座の銀座メゾンエルメス フォーラムでマチュウ・コプランによる展覧会「エキシビジョン・カッティングス」が開かれている(7月18日まで)。マチュウ・コプランは、ロンドンを拠点に活動するするフランス/イギリス人キュレーター。タイトルの「カッティング」について、ギャラリーのホームページに解説されている。

 

「カッティング」とは2つの意味を持つ。ひとつは植物の「挿し木・接ぎ木」。生命体が他の場所に移され、自らとは異質な存在と交わって生態系を織りなすことを指す。そしてもうひとつは、文字通りに「切る」の意味であり、こちらは過去の展示の要素を切り抜き、編集するコプランの制作手法にほかならない。

 

一方では「挿し木・接ぎ木」を参照し、音に満たされた空間を展開。音を主軸に美術活動を行う西原尚らとともに構築された空間には、中央に植物が設置され、ミニマル・ミュージックの巨匠フィル・ニブロックによる書き下ろしの音楽と、ガラスの窓から差しこむ自然光が入り交じる。

 

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 もう一つは、ギャラリーの小さな空間で映像作品が上映されている。そこでは、

 

コプランが2016年に単独でキュレートした展覧会「A Retrospective of Closed Exhibitions(閉鎖された展覧会の回顧展)」を、ドキュメンタリー映像作品を通して再訪。同展は、アーティストが芸術行為として、あるいは自らの決断により閉鎖した歴代の展示を取り上げたものだ。ここでは、アートや展示空間における制度の限界や議論、そして展覧会の閉鎖をめぐる現在的な意味を再考することになる。

 

 現在のコロナ禍による様々な場所での「閉鎖」がテーマになっている。1964年赤瀬川原平らのハイレッド・センターは新橋の内科画廊で展覧会を行ったが、初日に画廊を閉鎖した。そして最終日の夕方画廊を開けてオープニングパーティーを行った。

 アルゼンチンではグラシエラ・カルネヴァーレが個展を行ったが、人々が空の展示室に入ると、施錠して彼らを閉じ込めた。サンティアゴ・シエラはギャラリーを金属板で閉鎖した。いずれも権力に抗議するものだった。

 ダニエル・ビュレンは表扉を作品で覆った。ロバート・バリーはギャラリーの閉鎖の案内状を送らせた。ジャン=クロード・ルフェーブルは夏季休業中のギャラリーのウィンドウに「展示」した。S.ヒガーとB.デジャノフはスタッフ全員に有給休暇を取らせてギャラリーを閉鎖した。マリア・アイヒホルンはギャラリーの全スタッフに5週間の欠勤を要請した。

 その他、「反芸術」、「反美術館」、「反文化」についての行動が提示されている。

 これは30分近い映像作品だったが、かなり見応えのあるもので、いろいろ考えさせられた。とても興味深いものだった。

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マチュウ・コプランによる展覧会「エキシビジョン・カッティングス」

2021年4月23日(金)―7月18日(日)

11:00-20:00(日曜は19:00まで)

不定休(エルメス銀座店の営業に準ずる)

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会場:銀座メゾンエルメス フォーラム 8階

住所:東京都中央区銀座5-4-1

電話03-3569-3300

https://www.fashion-press.net/news/71367

※入場は晴海通り側の店舗の入口ではなく、旧ソニービル側の入口から入るので、入りやすい。