トルコへの旅

 毎日新聞の全面広告でJTBがトルコへの旅行を特集している。イラストがベリーダンサーでセクシーな格好だ。とたんに今はソープといっている風俗店を昔はトルコ風呂といっていたことを思い出した。
 二十歳の頃、横浜市鶴見区に住んでいたので横浜の伊勢佐木町に時々遊びにいっていた。伊勢佐木町に平行している裏通りの長者町を通ったとき、スーツをピシッときめた中年の紳士がトルコ風呂から出てきたのを見た。ああ、俺も将来たくさん稼げるようになったらこんなところに来たいと強く思ったことをまだ憶えているからよっぽど強く思ったのだろう。
 当時私は性体験がなかったし、付き合っている女性もいなかった。詩の一節に「おまえのセクスはまだ聴覚を持たぬか」と書いたら、友人の久保田活司(id:mmpolo:20061027)が、フナ、早く女を知れと言ったことを憶えている。久保田活司は1年後輩だが、あるときこれからはお互いにフナ、活司と呼び合おうと言い出したのでそう呼びかけられたのだ。
 たくさんではなかったが、そこそこ稼げるようになったときには、すでにソープと名前を変えていたそのような店に行きたいとは思わなくなっていた。それでも十年に一度くらい長者町を通ると、あの時の渇望を思い出す。
 当時近くの日の出町には角ごとに街娼が立っていたし、女装の街娼もたむろしていた。数回だけ行った伝説のジャズ喫茶ちぐさがこの近くにあったのだ。
 トルコ風呂で連想する小咄。20年前の「ぴあ」に載っていたもの。

 父「おまえも将来トルコに行くことがあるだろう?」僕「オオッ!?」父「これ、やるよ」…期待と動揺の中、僕が手にしたものは "遠くて近い国トルコ" という題の新書本だった。〈空き家の良晃〉