飯田への旅

 入院しているお袋を見舞いに中央高速バスに乗って飯田へ行って来た。相模湖あたりで車窓から見える山々が埃をかぶったように薄い肌色をして、回りの針葉樹林に比べてかすかに盛り上がっているように見えた。裸木だった雑木がほころび始めているかのようだ。わずかな芽の微かな動きだから盛り上がって見えるはずもないが、夏雲のような動きが感じられた。
 道路脇の土手には群生しているフキノトウも見られたし、まだ何もない畑にはこぼれ種から芽生えたのかぽつんぽつんと菜の花も咲いていた。まるで利休の朝顔のように。
 それも山梨に入るとまだまだ冬のたたずまいだった。山々は硬く稜線を尖らせていた。諏訪湖は暗く灰色に濁っているかのようだった。信州はまだ冬なのだ。
 飯田の正永寺に活司の墓参りをして、樹齢400年の桜が二分咲きなのを見てきた。