山本弘の『銀杏』の元絵が分かった

 山本弘に「銀杏」という作品がある。下に掲載した作品だ。銀杏の根元を描いている。なぜこんな作品を描いたのだろうと不思議に思っていた。それが分かった。

 元絵なるものは奥村土牛の「醍醐」という作品だろう。構図がよく似ている。違いは土牛が華やかな醍醐寺の満開の桜を描いたのに対して、山本は夜の銀杏を描いている。

 山本はいつも普通華やかと思われるものを描くことはなく、しばしば人が暗い寂しい崩れ落ちそうなと思うものを作品のテーマに選んだ。そういうものが実は美しいのだと言っているみたいに。アル中だの酔っぱらいだのと飯田の市民たちから蔑まれている自分が実は優れて美しいのだと言うように。


山本弘の作品解説(3)「銀杏」(2007年4月15日)