竹橋の東京国立近代美術館で「美術にぶるっ!」という題名の企画展が開かれている(1月14日まで)。副題が「ベストセレクション 日本近代美術の100年」というもので、副題をみればどんな展覧会かよく分かる。
これは東京国立近代美術館創立60周年記念特別展で、500点以上という大量の作品が展示されている。会場は1階から4階まですべてを使っており、会期も3カ月とっていて、美術館がいかに力を入れているかがよく分かる。
4階から2階が「コレクションスペシャル」と題されていて、240点が並べられている。私が興味をもったのは、萬鉄五郎「裸体美人」、横山大観「生々流転」、土田麦僊「舞妓林泉」、三岸好太郎「雲の上を飛ぶ蝶」、松本竣介「建物」。この松本竣介の絶筆「建物」がこちらに展示されているので、世田谷美術館の松本竣介展に展示されてなかった。
藤田嗣治「アッツ島玉砕」「サイパン島同胞臣節を全うす」、戦争画の代表作であり、藤田の代表作でもある。草間彌生「冥界への道標」、これは撮影した。黒い布の突起で覆われた立体は、まさにペニスの集合だ。草間の強迫神経が造り出しているのだろう。
ポロックの油彩作品があった。制作年が1938-41となっている。ドリッピングの始まる前のピカソの影響が強い抽象的な作品で、つまらないものだった。これも撮影してきた。
抽象表現主義のトップの一人モーリス・ルイスの大きな作品「神酒」も展示されている。来年開かれるフランシス・ベーコンも1点。ピカソやクレー、デュビュッフェなども。
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第2部は1階が会場で「実験場1950s」と題し、美術館が1952年に開館したのを記念して1950年代の美術を扱っている。こちらも300点近く展示されている。
鶴岡政男「重い手」がすばらしい。河原温の「浴室」シリーズは28点も並べられている。中村宏「砂川五番」はモンタージュを試みたものだが完成度が高い。山口長男の「転」も傑作だ。曹良奎は「密封せる倉庫」と「マンホール」が展示されている。「マンホール」は宮城県美術館所蔵で、これは洲之内徹コレクションの1点。北朝鮮へ行ってその後不明になった曹良奎のこの作品が日本に残った経緯については、洲之内が『気まぐれ美術館』シリーズに書いている。これが残っただけでも洲之内に感謝したい。
それから山下菊二「あけぼの村物語」がある。これは欧米で評価が高い。荒川修作の初期のオブジェも並んでいる。工藤哲巳や浜田知明も。のちに会田誠がおちょくった東山魁夷の「道」も見ることができた。
さて、東京国立近代美術館によって日本近代美術の100年をこんなふうに通観することができた。とても有意義な展覧会だと思う。しかし、一方で日本近代美術の100年というのが意外に貧しかったのではないかと少し残念に思えた。もしかしたら、日本近代美術100年の傑作選として、網羅する方針を捨てて少数の画家の代表作のみを集めて展示したら、また印象も変わるかもしれない。
だが、こんな贅沢な企画は今後そうそう実現することはないだろう。来年の1月14日まで会期があるのだから、これから何度か足を運ぶことにしよう。