アイスランドのミステリ『湿地』を読む

 アイスランドの作家アーナルデュル・インドリダソンのミステリ『湿地』(東京創元社)を読む。帯とか新聞の書評とか、魅力的なようなのだ。まず、その帯の惹句から、

ガラスの鍵賞2年連続受賞、CWAゴールドダガー賞受賞、いま世界のミステリ読者が最も注目する北欧の巨人、ついに日本上陸。陰鬱な湿地のアパートで、ひとりの老人が殺された。突発的な殺人か。だが現場に残された謎のメッセージが事件の様相を変えた。
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国境も人種も関係ない、刑事たちは刑事だった。「湿地」は、警察小説の普遍性を照明した作品かもしれない。(堂場瞬一
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北の湿地に埋められていた過去が、思いがけない真実を照らす。この圧倒的な牽引力。警察ミステリの本場から、ついに真打ちが登場した。(大森望

 朝日新聞に掲載された楊逸の書評(2012年8月5日)。

 アイスランドの首都・レイキャヴィクの一角、ノルデュルミリ(北の湿地)にある集合住宅で老人が殺された。現場に残されたメッセージや、引き出しの奥から発見された古ぼけたモノクロ写真を手掛かりに、犯罪捜査官・エーレンデュルが仲間とともに真相を追う。
 陰鬱な湿地という事件現場に加え、肝腎な場面になるといつも大雨が降ってしまう。あたかも時間に埋もれた悲しい過去が訴えかけているかのように。やがて、捜査線上に二組の母子が浮上し、その意外な繋がりから、40年前から続く凄惨な物語が手繰り上げられることに。

「訳者あとがき」より

アイスランドの)国土は日本の3分の1弱、北海道と四国をあわせた程度で、主な産業は漁業と牧畜。人口32万人、都市人口率は92%、森林面積は国土の0.3%。間欠泉もある火山島である。

 人口32万人だなんて新宿区か高知市の人口並だ。その少なさが事件の展開に関係してくる。その他、アイスランドについていいろいろと知ることができる。
 さて肝腎のミステリの評価だが、豊崎由美の評価法にならって言えば、B+としよう。豊崎は作家について、古井由吉金井美恵子をAクラス、村上春樹をB+、石原慎太郎をBと評価した。この作家がB+なら、村上春樹並ということだ。Bの下には、B−、Cがあるのだろう。面白かったが、途中伏線もなしに警察のやる気のない上司が介入してきても、さらのその上司の名前を出して簡単に回避してしまうなど、少々ご都合主義なのも気になったから。


湿地 (Reykjavik Thriller)

湿地 (Reykjavik Thriller)