東京銀座7丁目のガーディアン・ガーデンで仲田絵美展「よすが」が開かれている(7月11日まで)。仲田は1988年、茨城県生まれ。2011年写真ワークショップ松本美枝子の「キワマリ荘の写真部」を修了した。2012年、第6回写真「1_WALL」審査員奨励賞、第7回写真「1_WALL」グランプリ受賞し、今回のグランプリ受賞者個展となる。
主宰者の言葉。
仲田絵美は、14年前の母親の死という経験から、「人が死んでしまうこと」「人が生きていくこと」について考えて生まれた作品「美しい速度で」により、第 7回写真「1_WALL」のグランプリを獲得しました。父親と二人で暮らす日々、母親の遺品や家族に関係する写真を組み合わせて展開し、「ポートフォリオでも力がこもっていたが、展示でもまた違う次のものを見せようと挑戦していた」、「完成度の高い作品であり、強い意志を持っている作家」と、審査員に評価されました。
今回の個展では、仲田自身が更に深く作品にのめり込んでいきます。母親の遺品である洋服や小物などを家の中で撮影し、それらに込められた母親の記憶をひとつひとつ写真に置き換えていきます。また、母親の遺品を身に纏った自分自身を撮影し、時おり父親にもシャッターを切ってもらいます。亡き母親を想いながら繰り返し撮影を行うことで、父親との距離を測り、少しずつ近付いていきます。仲田は自分自身の体も母親が遺したもののひとつと考えています。その体を被写体として、父親とともに写真を撮ることで、母親の死に力強く対峙します。「よすが」という言葉は「縁」と書き、身や心のよりどころをさします。仲田が見つけ出した「よすが」を、ぜひ会場でご覧下さい。
仲田絵美の言葉「展示に寄せて」
14年前、母が死にました。
我が家ではこれまでの間、母の遺品を保管していました。/しかし去年の父の定年を機にこれらを処分することになり、私は母の遺品撮影をはじめました。
私が撮った遺品写真/母の遺品を身に纏った自分自身を撮影した写真/また、その姿を父に撮影してもらった写真/など
これらの写真から見えてきたもの。/それが 身や心のよりどころ、/すなわち「よすが」でした。
母親が着ていたのであろう衣類が床に広げられ写されている。あるいは仲田が母親の遺品らしきスーツやワンピースを着て写っている。やはりちょっと古いデザインだ。仲田が父親と並んで写っている。セルフタイマーで撮ったのか。父親はどこか居心地が悪そうに見える。母親の持っていたと思われる装飾品、実家らしい立派な玄関がある。
ギャラリーで販売していたパンフレットには、母親の写真やレントゲン写真、両親の結婚式の写真、リビングらしき所で身支度をしている父親、大きなソファに下着姿で座る仲田自身、また彼女のヌード写真も載っている。
母親の遺品を撮るというと石内都を思い出す。しかし仲田の方が若いせいか、母親に対する姿勢がずっと切実に感じられる。写真を見ていると、仲田の母親への思いや、父親へのどこか屈折した感情が伝わってくる。妻の遺品を身にまとった娘の写真を撮ることは、父親にとって辛いことではなかっただろうか。
写真の撮影技術において、特に優れたものを持っているとは言いがたい。むしろ平凡なものではないか。にも関わらず、仲田の写真は見る者の心を打つ。グランプリを受賞したということが納得できる写真展だった。
ここガーディアン・ガーデンはリクルートが主催するギャラリー。
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第7回写真「1_WALL」グランプリ受賞者個展
仲田絵美展「よすが」
2013年6月24日(月)−7月11日(木)
11:00−19:00(日曜休館)
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ガーディアン・ガーデン
東京都中央区銀座7-3-5 ヒューリック銀座7丁目ビルB1F
電話03-5568-8818
http://rcc.recruit.co.jp/gg/