ギャラリートモスの和田祐子展−記憶の痕跡−が良い


 東京日本橋本町のギャラリートモスで和田祐子展−記憶の痕跡−が開かれている(7月30日まで)。和田はアメリカと日本でカリグラフィーを、欧米の講師(米・ドイツ・ベルギー・イタリア・英)から学んだ後絵画に転じる。2008年にベルギーの画廊で初個展、日本に帰国して2008年にギャラリートモスで個展を開き、その後もトモスで個展を続けて今回が4回目となる。
 初め羊皮紙に描いていたが、羊皮紙が手に入らないので紙に蜜蝋を引いて描き始めた。現在も蜜蝋を使った仕事をしている。ギャラリーに提示された和田のテキストを引く。

 言葉の磁力に惹きつけられ、文字とイメージの関わりに興味を抱き、言葉(文字)を書いてきた。少しずつ文字の形が消え失せていく過程で、画面に現れてきたのは、偶然と必然の狭間に浮遊する、心象の線と形だった。手探りで模索するうち、無意識の筆致が生まれた。これらは、今も文字を「配する」ことの原点と呼応する。






 和田の「心象の線と形」が魅力的だ。「偶然と必然の狭間に浮遊する」と書いている。描き、消し、重ねて描くという作業の結果なのだろう。全体の淡い色、ところどころに置かれた朱色、試行しながら描かれているような線、塗り重ねて太く描かれた線、それらから成っている和田の作品が、見る者の眼を惹きつける。派手な色も強い形態も描かれていないのに、なぜかおもしろい。魅力的な抽象画家のひとりだ。
 同じビルの1階のギャラリー砂翁では、イタリアの画家デボラ・アントネッロの版画展も開かれていて、これもとても良い。
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和田祐子展−記憶の痕跡−
2013年7月17日(水)−7月30日(火)
11:00−18:00(最終日17;00まで)日曜休み
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ギャラリートモス
東京都中央区日本橋本町1-3-1渡辺ビルB1F
電話03-3271-6693
http://www.jpin.co.jp/saoh
地下鉄(銀座線・半蔵門線三越前駅A1番出口より徒歩3分