夏休みの山手線の広告

 池袋から山手線に乗った。中吊り広告が夏らしく海のポスターだった。広告臭がなく上品なポスターだけど、これはどこの企業だろうとよく見ると、企業名が「jeki」となっていた。これって何だろうと考えたがよく分からなかった。
 車内を見渡すとあちこちに同じような海のポスターが貼ってあった。座っていた席を立って、車内のポスターを見て回った。それらが全部JR東日本のポスターだった。





 おそらく、今週中に夏休みが始まるから、通勤ではなくビジネスの移動に使われることが多いだろう山手線は、ビジネスマンたちが休暇を取って乗客が減るだろう。するとスポンサーが出稿を控えるはずだ(出稿はスポンサーが広告を出すこと)。広告スペースが空いてしまうのをJRが嫌ったのに違いない。それがたとえJRの広告だとしても、何かが貼ってあれば空いていることが目立たない。乗客は気づかないだろう。
 そういう意味ではスポンサーは極めてシビアで、高い広告代を払うために無駄な出費は絶対に避けようとする。雑誌『ジャンプ』が500万部出てた頃、読者は子どもたちより大人が多いのだと言われたが、広告を見れば子ども相手の商品ばかりだった。この雑誌が膨大な部数を誇っていても、読者のほとんどが子どもたちであることをスポンサーは正確に見抜いていたのだろう。
 広告スペースが空くのを嫌ってJRが自社広告で埋めたこのことが、ちょっとだけポーの「盗まれた手紙」を思い出す。JRの広告からポーへの連想は、まあ少しはペダンティックと言われても仕方ないところがある。多少は許されよ。
※その後調べたところによると、「jeki」とはJR東日本企画というJR東日本の子会社で、広告代理店だった。本文の主旨に大きな異同はないと思うので、このままにした。



盗まれた手紙

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