あらかわ画廊の清野晃代を見る


 東京京橋のあらかわ画廊で菅野静香・清野晃代展「−あ・ふ・る・る ものは−」が開かれている(7月19日まで)。ここでは二人のうち清野について紹介する。清野は1983年神奈川県生まれ、2006年に武蔵野美術大学造形学部油絵学科を卒業し、2008年に同大学大学院造形研究科油絵コースを修了している。2008年から4年間同大学で助手を勤め、2012年には同大学助手として海外研修にも行っている。
 初個展は2010年、特別養護老人ホーム日の出ホームと銀座スルガ台画廊で開き、2011年に同じ銀座スルガ台画廊のレスポワール展(新人選抜個展)にも選ばれている。また、昨年はこのあらかわ画廊で個展を行っている。
 私は2011年のレスポワール展のみ見ているが、とくに印象に残った記憶がない。今回のテーマは高齢で認知症を患った祖母を描いている。初回の日の出ホームでの個展も「祖母との日常」と題されていて、このテーマが清野にとって強くこだわったものであることが伺える。


 ベッドに老いた女性が横たわっているこの作品は「存在」と題されていて、大きさもM100号となっている。彼女が清野の祖母だという。眠ったように目をつぶり右手を投げ出して左手を胸に置いている。細部まで描き込まれた顔がよく見るとすばらしい存在感を示している。そこには彼女の生きてきた歴史と、その歴史を背負ってここにしっかりと存在する老女が確実に描き出されている。さらに老女の身にまとっている洋服の細密な描写が、その存在感をいっそう明確にしている。みごとな達成だと思う。
 わずかに足の描写に描き足りない感じを受けるが、優れた作品であることに変わりはない。描かれた祖母は2年前、大震災の直前に90歳で亡くなったという。清野が今後どんなテーマに取り組むにせよ、この作品の後なら何を描いても成功するのではないか。優れた新人画家を知ったのだった。
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菅野静香・清野晃代展「−あ・ふ・る・る ものは−」
2013年7月5日(金)〜7月19日(金)
11:00〜18:00(最終日16:00まで)日曜祝日休廊
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あらかわ画廊
東京都中央区京橋2-8-18昭和ビルB2F
電話03-3566-5213
地下鉄銀座線京橋駅(6番出口)より徒歩1分