東京創元社文庫解説総目録とハヤカワ・ミステリ総解説目録

 朝日新聞の三八(サンヤツ)広告に、東京創元社の「東京創元社文庫解説総目録」の広告が載っていた。「文庫全点を網羅した完全版目録」と銘打たれているが、文庫判2分冊函入り(分売不可)5,250円となっている。高い!! 一応、広告の本文を写すと、

(文庫創刊50周年記念出版)1959年4月の創刊から2010年2月刊行分まで、2,500点に及ぶ文庫全点の内容紹介に詳細な書誌データを加えた完全版目録。別冊〔資料編〕を付す。本体1,154頁、資料編416頁+口絵8ページ。

 ライバルの早川書房にも「ハヤカワ・ミステリ総解説目録1953年−2003年」がある。2003年9月に発行されたものだが、定価が1,995円だった。これだって高い。私が買ったのがその10年前の版で「ハヤカワ・ミステリ総解説目録1953年−1993年」で、これがちょうど1,000円だった。
 まずこれらの値段について苦情を言いたい。言ってみれば目録なのだから、販促品ではないか。どうしてこれで利益を上げようなどと考えるのだ。そんなことを言うのも、ずっと以前、未来社の先代社長西谷能雄が「未来」というそのPR誌で、この雑誌の収支報告を書いていたのを憶えているからだ。「未来」は定価100円(だったか?)としていて、定期購読している読者もいるが、ほとんどは販促品として書店で無料で配られている。原稿料や印刷製本代がいくら、購読代がいくら、差し引きするとたしか60万円ほどの赤字だと書かれていた。だが、この赤字は宣伝費と考えている。新聞広告を出せばそれ以上にかかってしまう。広告代と考えれば、赤字ではないと言い切っていた。
 文庫やポケミスの総目録なのだから、せめて1冊500円くらいで売ることをなぜ考えないのだろう。××の×の小さい出版社たちだ。(念のため、「たち」は丁寧で、「ども」は丁寧ではない)。
 ついでに紹介すれば、「ハヤカワ・ミステリ総解説目録1953年−2003年」には2003年に実施した読者アンケートの結果が載っている。好きな作品ベスト10と、好きな作家ベスト10だ。

●好きな作品
1.「幻の女」 ウイリアムアイリッシュ
2.「午後の死」 シェリイ・スミス
2.「女には向かない職業」 P. D. ジェイムズ
2.「骨と沈黙」 レジナルド・ヒル
5.「長いお別れ」 レイモンド・チャンドラー
5.「はなれわざ」 クリスチアナ・ブランド
7.「ウッドストック行き最終バス」 コリン・デクスター
7.「ママは何でも知っている」 ジェイムズ・ヤッフェ
9.「そして誰もいなくなった」 アガサ・クリスティー
9.「うまい犯罪、しゃれた殺人」 ヘンリイ・スレッサー
       *
●好きな作家
1.ジョン・ディクスン・カーカーター・ディクスン
2.P. D. ジェイムズ
3.コリン・デクスター
4.クリスチアナ・ブランド
5.エド・マクベイン
6.アガサ・クリスティー
7.レジナルド・ヒル
8.イアン・ランキン
9.E. S. ガードナー
10.カーター・ブラウン

 なに、読者投票なんてベストセラーの別名みたいなものなんだから、あまり当てにすることはできない。とは言うものの、コリン・デクスター「ウッドストック行き最終バス」を初めとするモース主任警部シリーズは確かに傑作だった。
 本書にはまた、ミステリ作家たちの短いエッセイが載っている。原寮(ウ冠がない)、東直己若竹七海芦辺拓山田正紀らだが、ミステリ作家たちのエッセイが皆下手なのに驚いた。


東京創元社文庫解説総目録

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