ギャラリーQの石田徹也展とその周辺


 銀座1丁目のギャラリーQで「石田徹也全集−出版記念及び五周忌展」が開かれている(5月29日まで)。3年前に出版された「石田徹也遺作画集」に続いて、先頃「石田徹也全集」(求龍堂)が発行され、それを記念して開かれた。一昨年の練馬区立美術館の個展では展示されなかったあまり大きくない作品が並んでいる。学生時代からのものも展示されていて、早い頃から独自の作風を持っていたことがよく分かる。
 私も以前彼について書いたことがあった。
「石田徹也という画家のこと、アジアの絵画バブル」(2007年6月8日)
 そこで次のように書いた。

 3つの画廊が回顧展を開いたとき求龍堂から「石田徹也遺作画集」が発行された。出版社に電話して発売日を確認し、発売当日池袋のジュンク堂本店のホームページを見た。ここは本店の在庫数を表示している。日本で一番大きく品揃えの多いこの書店で石田徹也の画集の在庫はたった1冊だった。こんなに在庫が少ないというのは、出版社が売れないと踏んだのだ。しかしNHKで取り上げたとたんブームとなり瞬く間に増刷を重ねた。

 その「石田徹也遺作画集」も今では13刷り、33,000部を売り上げたという。上述したように、発行元の求龍堂では本書に対して売れるとは全く理解していなかったらしい。求龍堂美術書の出版では長い伝統を誇る老舗出版社だった。それが数年前社員たちに会ったとき、一般書への参入を意図している風だった。名刺を交換すると、会社の住所は文藝春秋ビルの中にある。文藝春秋の子会社になっているのかと思ったが、ついで名刺をもらった求龍堂社長のメールアドレスは一人だけ@shiseido.comだった。すると資生堂から社長を迎えているということだろうか。たしかに美術書は売れなくなっているのだろう。美術書の出版社として会社が独立していくのは難しいのかもしれない。そのことと「石田徹也遺作画集」の販売数量を読み誤った編集部だか営業部だかの見識のなさとは関係しているのかもしれないと思ってしまう。
 児童書の専門出版社だったポプラ社は、現在一般書の出版に大きく舵を切っている。教科書が専門の教育出版はミステリを出版してみたが、成功しなかったのではないか。
 石田徹也展の話題が出版社の経営方針の変更の話になってしまった。


石田徹也全集−出版記念及び五周忌展
5月17日(月)−29日(土)(日曜日休廊)
11:00−19:00(最終日−17:00)
ギャラリーQ
東京都中央区銀座1-14-12 楠本第17ビル 3F
電話 03-3535-2524
http://www.galleryq.info/

石田徹也全作品集

石田徹也全作品集

石田徹也遺作集

石田徹也遺作集