『ベスト珍書』というヘンな本を読む

 ハマザキ カク『ベスト珍書』(中公新書ラクレ)を読む。副題が「このヘンな本がすごい!」というもの。ヤバい、すごい、怪書、エログロ、発禁本など100冊を厳選したとカバーの袖にある。中央公論社がそんなトンデモ本を発行したのかと半信半疑で読んでみた。
 目次を見ると、「珍写真集」「珍図鑑」「珍デザイン書」「珍造本」「珍理工書」「珍語学書」「珍人文書」「珍医学書」「珍エロ本」「珍警察本」とある。そして『葬儀トレンド写真集2013』とか、『写真集 手押しポンプ探訪録』『米軍による日本兵捕虜写真集』『行って見て聞いた 精神科病院保護室』『誰にでもできる職務質問』などマニアックな題名の本が並んでいる。
 「珍エロ本」の章で紹介されている徐美姫『SEX』(赤々舎)は、縦42cm、横31cmという大型本で、しかし内容はモノクロで写された波の写真がただひたすら48ページにわたって載せてあるだけという。
 やはり中央公論社だから、あまりおかしな内容は掲載されていない。編集者が自己規制しているのだろうか。そのなかで、最も危ない内容だと思われるのが、尾上泰彦『アトラスでみる 外陰部疾患プライベートパーツの診かた』(学研メディカル秀潤社)だ。その紹介は、

 この本を見たら、たとえ男子中学生だったとしても、そのあまりのグロテスクさにしばらくの間、性欲が限りなくゼロに減退することは間違いない。この『ベスト珍書』で紹介してきた本の中でも最も目を背けたくなる一冊だ。また読み終えた後、最も手を入念に洗いたくなるような本でもある。載っているのは、梅毒、クラミジア、尖圭コンジローマ、性器ヘルペス、ケジラミ症、カンジダ症などありとあらゆる性病に罹患した女性器と男性器だ。
 冒頭では亀頭冠の部分にブツブツがまとわりついた状態の男性器や両側の陰唇の一部が繋がっている女性器など、一見、病気に見えるが正常な生理的状態の様態を紹介している。中盤からは性病にかかった患者の写真などが掲載。梅毒患者は性器だけでなく、顔面や体にバラ疹が発生している。悪性梅毒の場合は顔面の半分ほどが崩壊しかけており、見るも無惨である。淋病感染症の場合は尿道からコンデンスミルクのような、膿性分泌物が漏れている。中でもグロテスクなのが尖圭コンジローマで亀頭部分からコケのイボのようなものが発生している。肛門にも転移するらしく見ているだけで吐き気を催す。カンジダ症も不気味で、性器からおりもののような、乾燥したヨーグルトのようなものが大量に分泌されている。後半では(中略)いずれもあまりに痛々しい症例で、興味本位で見ると後悔することになるだろう。

 仕事のために見た著者ハマザキ氏に同情を禁じ得ない。また編集者にも多少だが同情してしまった。