講談社のPR誌『本』

 毎日新聞の書評欄に「MAGAZINE」という雑誌を紹介する小さなコラムがある。4月22日のそれは『本』4月号だった。

 本のPR誌は数々あるが、一本筋が通って読み応えがあるのは新潮社の『波』と、この講談社の『本』である。
 巻頭に思想についての考察。それも気鋭の学者上野修がやさしく書いて解りやすい。今月はライプニッツの3回目。本のPR誌は出版された本の内容紹介がほとんどだったが、『本』はむしろここで書かれた文章が本になる。
 小冊子なのに政治経済から宗教、野球まで多彩な読み物が並んでいるが、出色なのは二つの連載。一つは堀井憲一郎の「米朝が教えてくれた」。もう一つは池内紀の「珍品堂目録」。(後略)

『本』の魅力をあげるなら、表紙の美術作品に触れないのは重大な欠陥である。もう数年にわたって日本の若手の現代美術作品が取り上げられている。作品を選択し解説を書いているのは高階秀爾だ。その選択は実に的確で作品の解説はみごとなものだ。もう数十人の作品が取り上げられたが、それらを見れば日本の現代美術の動向が分かるというものだ。
 何しろ高階はVOCA展の選定委員長なのだから、若手の最新最善の作品を見ることができるのだ。
 出版社のPR誌がここで2誌選ばれているが、そういう意味では筑摩書房の『ちくま』も岩波書店の『図書』も読み応えがある。休刊してしまったが、三省堂書店の『ぶっくれっと』も良かった。むしろ『波』こそが「出版された本の内容紹介がほとんど」ではなかったか。

 写真は『本』の2011年12月号の表紙。取り上げられた作品はヤノベケンジの「幻燈夜会−−倉敷」。高階の解説はさすがに作品の魅力を語ってとても分かりやすい。