うしお画廊の淀井彩子展を見る

 東京銀座のうしお画廊で淀井彩子展「地図・Pentimento 2022」が開かれている(8月6日まで)。淀井は1966年に東京芸術大学美術学部油画科を卒業し、1968年に同大学大学院油画専攻を修了している。その後フランス政府給費留学生としてパリに留学。2011年まで青山学院女子短期大学芸術学科教授を勤めていた。1971年にみゆき画廊で初個展、2012年には横須賀美術館で個展を開いている。淀井は長くみゆき画廊で個展をしていたが、みゆき画廊が閉じた後、2017年から毎年うしお画廊で個展を開いている。

 淀井の言葉より、

 

畳まれた地図を広げ、迷路のような地形の中に入り込む。

地図の向きを変えながら目的地を見つけ印をつける。

平面化された地図は実用性をもちながら、不思議な魅力を持っている。

川に沿って洞窟を訪ねたり、列車で国境の山を超えたり、地図は目的地までの多くの土地を通過させる。

絵画制作は私にとって未知の目的地に向かう地図のようだ。

私の絵画の色彩・時間の奥には、地図のような記号や暗号化した目印が散在し地層となり絵画の表面を支えている。

時として航空考古学のように姿を表すこともある。過去から現在への厚みのある存在として絵画の色彩・時間を成立させている。

絵画と共に生きる行為そのものが大冒険なのだ。

 



 1枚目に紹介する作品がとても良かった。2枚目以降の作品は以前制作した作品に新たに描き加えたものだという。よく見れば元の作品が薄く透けて見えている。淀井は広大な大地を俯瞰するように描いている。色彩、テーマともどこか日本人離れしているのはなぜだろう。高村光太郎が詩「根付の国」で根付のようだとうたった日本人と真逆な印象の淀井の作品だ。ヨーロッパに留学すれば誰でも身に付く感性ではないだろう。

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淀井彩子展「地図・Pentimento 2022」

2022年7月25日(月)―8月6日(土)

11:30-19:30(最終日17:00まで)日曜休廊

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うしお画廊

東京都中央区銀座7-11-6 GINZA ISONOビル3F

電話03-3571-1771

http://www.ushiogaro.com/