山本弘の詩

 ここに山本弘の詩集『ありぢごく』第1集がある。発行は55年秋とあるから、山本弘25歳の時だ。そこから何編か紹介する。

 

  (ひきはがされた夢が)

 

ひきはがされた夢がさめきらぬうちに

どろにまつわれつかれた足をそのまゝ

冷たい床の中になげ出して

逆上した頭にたかいたかい木の枕をあてがい

すゝだらけの天井を睨みつけて

ぶっそり云ってやる

  ――――おたんこなすめ――――

 

 

 

  (夜のとばりは狂ほしく)

 

夜のとばりは狂ほしく

朝のしとねは空々しく

昼のまなこはねむりねこ

 

喰らった酒は垂れ小便

貯水の池から水道の

蛇口に出てくる生の水

 

恋は移って青い葉

又々変って赤い実

千変変ってばか踊り

 

ぷらぷら廻る油虫

一と月前の油虫

今夜の部屋の恋の味

狂い踊った恋踊り

 

 

 

  (やい がまがえるの)

 

やい

がまがえるの

糞ったれ畜生奴!

いつまでもじいっとしてるが良い

お前のいぼいぼの上に

熱い長い小便を垂れてやる

やい、

いぼいぼ奴、

僕がかく酔っぱらってゐたとて

お前がいやらしい横眼で

じろりとにらんだところで

僕は

お前の横で再び

おちんこ出して昨日とおんなし様に

カウンタアの下え

ながあい小便を垂れてやる

 

 

 

  (今後一切口を利かざること)

 

今後一切口を利かざること

そうだ

そう云うことも可能なはずだ

さしでがましい人間共よ

お前の忙しく動き廻るからだに

僕は

  僕はねえ

横向いて

    ぺ、 ぺ、

 

お前が女の尻追い廻したところで

お前が暗い道とぼついたところで

僕な何んにも云やしない

僕は

    ぺ、 ぺ、 なんだ