辛酸なめ子の「女子校育ち」を読んで

 筑摩書房のPR誌「ちくま」4月号に前川直哉のエッセイ「辛酸なめ子さん、女子校への愛をぶちまける」が掲載されていて、面白そうに思われた。

 内容も女子校出身者へのアンケート、学校説明会レポート、文化祭や同窓会への潜入記、現役女子校生による座談会や男性教員へのインタビューなど、手間ひまのかかる企画ばかり。女子校への熱い情念が伝わってきます。

 それで読んでみたが前川さん、ほめすぎですね。辛酸さんはフィールド調査をもっと研究したほうがいいのではないか。あるいは調査が十分に生かされてないのかもしれない。手間ひまのかかる企画がそれに見合った結果を生み出していないと思われる。
 ちょっと興味が持てた部分を、

 たしかに最近は「萌え」という便利な言葉のおかげで、女性もスーツ萌えとかメガネ萌えとか、ライトに欲情を表現できるようになりました。しかし女性の場合は、年齢的な要因において不利だと(現代美術のコレクションで有名な精神科医高橋龍太郎)先生は警告します。
「女性にとって恋愛は一大事なので、女性誌を見ると、恋愛についての記事が満載です。恋愛の情報戦については男性の方が不利ですが、年齢においては女性の方が不利です。20歳の女性の価値が男性の年収1千万円に相当し、年齢が1歳上がるごとに年収が50万円下がるという説があります。そうなると30歳で年収500万円の男性が合うことになってしまう。ただでさえ、30まで仕事一本で生きてきた女性には、マーケットが狭まり、釣り合う男性は少ないです。

 高橋先生、嘘だあ。
 その他に大いに興味を惹かれたのが言葉づかいだった。私からみたら不思議な言葉づかいをしている。これって今では一般的な言い方なんだろうか。

大人になったら何万回も一人で食事をして、一人で帰らないとならないのです。(p.65)

「スポーツ系やステージ系の部活は練習や上下関係が厳しくて先輩に年賀状を書かないとなりませんでした」(東洋英和・20代)(P.77)

 千葉随一の進学校、市川高校出身の男性たちに話を聞いた。

K  豊島岡の子と池袋のカラオケで酒飲みながら王様ゲームしたことがあるよ。氷を男女で口移しで渡していって、渡せなくなった人はアウトで飲まないとならない。(P.132)

 これらに共通する「〜とならない。(〜となりませんでした。)」が、どうにも座りが悪く感じられるのだった。
 女子高生の生態については、吉田秋生の漫画を原作にした中原俊監督の映画「櫻の園」がよっぽど勉強になった。

女子校育ち (ちくまプリマー新書)

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