伊東光晴の橋本健二著『アンダークラス』(ちくま新書)の書評から

 毎日新聞の書評欄に伊東光晴橋本健二著『アンダークラス』(ちくま新書)について紹介している。本書の副題は「新たな下層階級の出現」。伊東によると、橋本は日本の階級構造を、資本家階級、労働者階級、農民や商店主のような旧中間階級、技術者、教員、サラリーマンなどの新中間階級からなっているとし、この労働者階級に極端に年収の低い人が含まれていることを問題視すする。
 労働者階級の下にもうひとつの階級「アンダークラス」が生まれた。これが著者の主張である、と。以下、伊東の書評を引く。

データが示されたアンダークラスは、男性では40代でも配偶者のいる人が約20%にとどまっているとか、女性では全員が未婚または離死別であるとか、貧困率が男性20代で38.1%、同女性で44.4%、40代の女性は56.3%に達すると。
 著者はアンダークラスの人の育った家庭環境、就学状態、健康等、生いたちを調べていく。
「貧困の悪循環」のように、生いたちのハンディキャップが大きく関係している。著者の筆は中年のアンダークラスの将来や、高齢のアンダークラスの女性へと進む。
 本書を読んで強く心に残るのは、学校を終える時、就職して、2年、3年で自分に合った職でないとわかって離職する時、誰でも正規の職業につけない危険があることと、アンダークラスの生活を強いられた人の、社会に対するうっぷんである。
 何よりもアンダークラスを生む社会制度を変えねばならない。それは規制緩和によって可能になった派遣業の廃止である。

 

「何よりもアンダークラスを生む社会制度を変えねばならない。それは規制緩和によって可能になった派遣業の廃止である」!!!

 

 

アンダークラス (ちくま新書)

アンダークラス (ちくま新書)