名古屋覚の「ジパング展」批判

「月刊ギャラリー」7月号に美術評論家名古屋覚が6月号の岡本太郎批判に続いて「ジパング展」を酷評している。題して「漫画の国の国粋主義展」。ジパング展は日本橋高島屋で6月に31人の若手美術家を集めて開かれた。名古屋覚の厳しい寸評。

天明屋尚=通俗日本調劇画
町田久美=高級妄想イラスト
鴻池朋子=カワイク怖い童話画
山口藍=小児愛臭イラスト
会田誠日本画ロリコン
山口晃=空想歴史漫画
森淳一=細密怪奇彫刻
上田順平=陶製悪趣味置物
O.JUN=絵画風イラスト
宮永愛子=脆弱からくり
青山悟=意味不明刺繍
池田学=超細密ペン妄想画
三瀬夏之介=ばかでかく汚いが純朴めいてけなしにくい卑劣日本画
棚田康司=小児愛臭彫刻
山崎史生=ポップ棚田
近藤聡乃=アニメ山口藍
岡本瑛里=油絵風怪奇イラスト
束芋=侮日妄想アニメ
染谷聡=日本語駄じゃれオブジェ
藤田桃子=日本画風怪奇紙汚し
山本太郎日本画風通俗画
石原七生=日本画風荒唐無稽画
山本竜基=自己愛妄想画
吉田朗=仏像型ポップ置物
樫木知子=貧血妄想画
南条嘉毅=退屈樫木
渡邊佳織=日本画風イラスト
風間サチコ=荒唐無稽版画
龍門藍=油絵風日本語駄じゃれイラスト
熊澤未来子=細密鉛筆妄想画
指江昌克=油絵風空想イラスト

 ちょっと激し過ぎないか。町田久美、会田誠山口晃、三瀬夏之介、風間サチコらは評価したい。他はよく知らなかったり、少しは名古屋に同意するものだ。何と言ってもこの「ジパング展」を見逃してしまった。
 名古屋は続けて書く。

 見かけはさまざまだが共通点が2つある。まず、絵でも彫刻でも、カワイイあるいは怪奇または珍妙な、そして細かい「絵柄」が作品の面白さのすべてである点。つまり高級めかした漫画かイラストだ。技術こそ異様に高い。(中略)芸術の普遍性に関わる何かが、ほぼ全員に欠けるのだ。次に、どれも妄想的か内向的あるいは小児的で、現実の世界への意識が感じられないこと。「カワイイ、漫画的、オタク的」という十数年来の欧米の日本現代美術観そのままである。

 しかし、名古屋は村上隆は高く評価している。

 日本の漫画的造形を西洋美術に対置して論議を起こす試みなら村上隆が昨年、ベルサイユ宮殿で実行している。31のひこばえを束にしても大木村上の野心に及ばない。

 この展覧会を見逃したのがつくづく残念だ。大阪高島屋では8月31日〜9月12日、教徒高島屋では9月28日〜10月10日に開かれるが。