ラファティ『地球礁』を読む

 R. A. ラファティ『地球礁』(河出文庫)を読む。奇妙なSFだ。以前も『つぎの岩につづく』(ハヤカワSF文庫)を読んだことがあった。『九百人のお祖母さん』(ハヤカワSF文庫)も持っていたが、これは読んだ記憶がない。書棚にもないので、読まないまま手放してしまったのかもしれない。
 本書は地球に住みついた異星人であるプーカ人のデュランティ一家が地球人とどう交流するか、というよりどう戦ったかをプーカ人の側から書いている。ふつうSFに見られる、非地球的な要素をいかに説得的に語るかとか、そういう努力は一切ない。彼らがバガーハッハ詩なる奇妙な4行詩を唱えると、簡単に人間も殺すことができる。詩だからちゃんと脚韻を踏んでいる。
 その一例。

物盗り気取りはうんざり、止め頃
あぶくがはじける! 手からこぼれる!
スタット! 足元に気をつけろ!
ジャッカル斧を持っている!

 これで地球人スタットガードは殺されててしまうが、「妙なもので、人を殺しても、当の相手だけはそれがわからなかったりする」なんて書かれている。
 いわば、ほら話SFの系譜に属するだろう。『つぎの岩につづく』もほら話SFだった。ほら話SFといえば、スタニスワフ・レムの「泰平ヨン」の優れたシリーズを思い出す。レムのことだから単なるほら話ではなく、それが大きな哲学的思索に繋がっていた。だから、レムと比べれば、ラファティのSFが射程の短いものに思われても仕方ないだろう。『九百人のお祖母さん』を読まないで手放したのも不思議はなかった。


地球礁 (河出文庫)

地球礁 (河出文庫)