スタニスワフ・レム『短篇ベスト10』(国書刊行会)を読む。「スタニスワフ・レム コレクション」全6巻のうちの1冊。10篇の短篇が載っている。以前、佐倉統が朝日新聞に書評を書いていた(2015年7月5日)。
スタニスワフ・レムは、いろいろな顔をもつ作家だ。映画化された『ソラリス』のように知性とは何かを追求したり、情報と生命はどこが違うのかを真っ向から扱ったり、自我意識の虚構性をあっさりと料理してみたり、機械化が進んだ星での精神世界のありかたをユーモアたっぷりに描いたり。実に多彩。(中略)
いわゆるSFであるけれど、どの作品も科学技術の細部が前面に出てくるタイプではない。科学技術がとことん進歩したら人間や世界はどうなってしまうのか、想像力と博覧強記をフル回転させて全体のパターンを哲学的に描くのが彼のスタイルだ。
レムはありきたりのSF作家ではない。レムに親しんだらほとんどのSF作家が幼稚で馬鹿らしくなってしまう。SF評論家の大森望もレムを評価して書いている。
『天の声』は、レム長篇の(もしくは"宇宙からのメッセージ"小説の)極北に位置するウルトラスーパーハードSF。群盲が象を撫でて無数の仮説を構築する話だが、相当じっくり読まないと面白さがわかりにくい。これに比べりゃ、グレッグ・イーガンの『ディアスポラ』なんて綿アメですよ。
『短篇ベスト10』の中では「テルミヌス」が素晴らしい。大事故にあった宇宙船の中に唯一生き残った、壊れかけのロボットに秘められた謎を書いている。
この『短篇ベスト10』はポーランドの読者の投票と、レム自身の愛着のある作品と評論家の選んだ作品から構成したとある。私だったらぜひ「ピルクスの話」を入れたい。レム『宇宙飛行士ピルクス物語』(ハヤカワSF文庫)の中に収められている。ここに簡単に紹介している。
https://mmpolo.hatenadiary.com/entry/20120512/1336749488
数年前に亡くなってしまったが、私はレムこそノーベル文学賞にふさわしいと思っていた。その次に評価するのがイギリスのスパイ小説作家ジョン・ル・カレなのだが、何か?
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