佐藤洋一郎「イネの文明」(PHP新書)を読んだ。副題が「人類はいつ稲を手にしたか」、著者は植物遺伝学者で稲の起源を研究している。本書では、従来インディカのイネとジャポニカのイネは共通の野生イネから選別されて栽培種になったと理解されていたが、著者はDNAの分析から野生インディカと野生ジャポニカからそれぞれの栽培種が生まれたとする。もともと栽培種になったのはジャポニカで、それは中国の長江から生まれたとする。
かつて私が大変おもしろく読んだ池橋宏「稲作の起源」(講談社選書メチエ)についても半ページほどだが肯定的に紹介されている。
……水田稲作のおこりを株分けした根菜類の苗の移植に求める意見もある。日本大学の池橋宏さんは、田に水を張り苗を植える田植えを、バナナ、タロイモなど根菜類を栽培してきた文化の影響と考え、原始的な稲作の場でも、種子由来の苗ではなく株を集落近くの田に移植したのではないかと推測している。むろんこの池橋説には批判もあるようだが、私には検討の価値がある魅力的な仮説のように思われる。
本書の発行は2003年だ。その後の8年間でまた新たな展開があったかもしれない。
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以前、池橋宏「稲作の起源」を紹介したエントリー
・稲作の起源、中尾佐助の誤り(2007年2月9日)
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