ビルの中に作られた水田と菜園

 私の勤める職場はビルの11階に食堂がある。食堂の窓から眺めると真向かいのビルの1階が何かやけに明るくて、あれは何だろうと同僚の間で話題になっていた。仕事の帰り道に覗きに行った。ガードマンが親切に案内してくれて、受付嬢たちが笑顔で説明してくれた。
 ここは派遣会社パソナの「アーバンファーム」ということで、ビルの中で稲や野菜を作っている。太陽光の代わりに強烈な人工照明を当てている。許可を得て水田を撮影させてもらった。1年に3回収穫できる予定だとのこと。水稲は出穂期=穂の出る時期を迎えていた。



 ただ、ちょっと葉が過繁茂ではないかとも思われた。葉が茂りすぎると収穫量が減ってしまうのだ。まあ、固いことは言うまい。東京のど真ん中のビルの中で米が採れるのだ! この1階にはバラ園も作られている。
 2階に移るとパプリカやミニトマト、ナス、レタスなどが作られていた。それなりに実がなっていたが、これも観賞用と思えばなかなかの出来だろう。
 作業をしていたお兄さんに病害虫は発生しないかと聞くと、露地ではなくて室内だからほとんど発生しないとの答えだった。しかし、注意して見るとパプリカの葉裏にはコナジラミという害虫がいるではないか。お兄さんに話すと苗に付いてきたオンシツコナジラミが寄生しているがなかなか防除しきれないと言う。すると殺虫剤は使っているのだろう。
 1階のバラにはアブラムシが寄生していた。アブラムシなんて殺虫剤で簡単に防除できるのに、なかなか農薬は使いにくいのかもしれない。
 このパソナのアーバンファームのあるビルは日本橋の呉服橋の交差点のところにある。外壁にはバラや藤が植えられて風に揺れている。
 オンシツコナジラミといえば以前キジラミ・コナジラミの図鑑を企画して、当時大阪市立自然史博物館の宮武頼夫先生に執筆をお願いしたことを思い出した。宮武先生からは断られてしまったが。