昔から節電を実行している銀座のクラブ

 原発事故の影響で節電が求められている。私の勤める職場でも天井の蛍光灯の3分の2が外された。その節電をむかしから実行しているのが銀座のクラブだった。
 私は前職でときどきクライアントを銀座のクラブで接待していた。まあ、銀座のクラブといっても2流どころではなかったか。私の友人が久保田一竹に連れて行かれた超1流のクラブ「エレガンス」が客単価10万円と言われていたのに、私の使っていた店は客単価2万円とか3万円だった。それでも3人で行けば6万円から9万円になる。このくらいの店ではホステスが少しは教養があるというのでもなく一際美人というのでもないので、実はほとんどつまらなかった。キャバクラでも女の子が少し若いだけで事情はそんなに違わなかった。クライアントの皆さんは喜んでくれていたが。
 で、退屈を紛らわせるためにホステスたちの手相をみてやった。これは大変喜ばれた。手相を見るというのを口実に手を握るのが目的だと思われないように、決して彼女たちの手に触れないようにして、手相をなぞるときも万年筆のキャップの先を使っていたくらいだ。
 それで分かったことが、クラブの照明がとんでもなく暗いということ。暗くて彼女たちの手相が見えないのだ。いつもライターの火をつけてその明かりで手相を見ていた。自宅に帰ってその明るさを再現してみた。テーブルの下に潜って自分の手相を見てもクラブの暗さではなかった。
 そんなにも暗いので、漫画家の西原理恵子が38歳のときにホステスを体験して28歳と称しても通用したのだった。さすがに18歳は通らなかったそうだが。
 いつも行っていたクラブのママに山本弘展の案内ハガキを渡したことがあった。個展会場のギャラリーにいた時たまたま見慣れない老婆が入ってきた。それが初めて明るい照明の下で見たあのママだった。