ちくま新書「セックスメディア30年史」を読む

 荻上チキ「セックスメディア30年史」(ちくま新書)を読む。驚いたのはこれを書いた荻上がまだ30歳という若さだということ。それがよく調べられて書かれているのだ。私が知らなかったことが多々あったほど。小さな驚きは筑摩書房から発行されたこと、さすがに岩波新書中公新書講談社現代新書からは出なかっただろう。
 さて、内容は出会い系、エロ雑誌、アダルト動画、大人のオモチャ、性風俗となっている。出会い系としてまず電話風俗が取り上げられる。テレクラ、ポケベル、伝言ダイアルダイアルQ2、そして雑誌「じゃマール」の登場の意味など、その歴史が語られる。これらが盛んだった頃は荻上はまだ小学生だったはずなのに。ついでウェブ上の出会い系が紹介される。掲示板型から進化してケータイ向け出会い系サイトまで発展した。
 そういえば一時期エロ雑誌は一般書店の店頭にもたくさん積まれていた。アダルトビデオを紹介した「オレンジ通信」とか、加納典明編集の「THE TENMEI」、「デラべっぴん」、「Cream」とかとか。加納典明Tバックを前後反対にはかせた「典明ばき」を開発して過激な写真を撮っていたが、逮捕されて反省し雑誌も休刊してしまう。この雑誌を出していた竹書房は「ぼのぼの」も出していたり、不思議というか節操がないというか、経営者はどんな人なんだろう。また神田にあるアダルト専門書店「芳賀書店」の社長へのインタビューもある。
 アダルト動画では無料サイトが語られる。広告収入に頼る動画サイトは無料で閲覧できる。最近はケータイからのアクセスが増えているという。しかし書くことが少ないらしく、インタビュー記事が主体になっている。
 で、大人のオモチャである。TENGAというブランドの男性用マスターベーション用のカップが紹介される。社長インタビューが充実していて、こだわりの製品は累積出荷数1,000万個を超えるという。ついで紹介されるのがラブドールオリエント工業の高級ダッチワイフの商品名で、これについては私もギャラリーで見て感想を書いたことがあった。本当によくできていた。
ヴァニラ画廊の「人造乙女博覧会」(2010年5月6日)
南極1号について私が知っている二、三の事柄(2008年4月29日)

 最後に性風俗篇、デートクラブやノーパン喫茶、イメクラ(イメージクラブ)、性感マッサージ、ブルセラショップ、ランジェリーパブ、カップル喫茶、ファッションヘルス、デリヘル(デリバリーヘルス)等々がごく簡単に紹介される。
 いやそれにしてもよく調べて書いている。そういえば、かつて文献だけで書かれた椹木野衣「日本・現代・美術」(新潮社)があったことを、ふと思い出した。


セックスメディア30年史欲望の革命児たち (ちくま新書)

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