吾妻ひでおの自伝マンガ「地を這う魚」(角川文庫)を読む。副題が「ひでおの青春日記」とあり、赤羽の印刷工場の工員から漫画家のアシスタントになり、やっと漫画雑誌の付録に短篇を描かせてもらえるようになるまでが描かれている。
吾妻ひでおらしくシュールで、登場人物は主人公とたまに描かれる可愛い女の子だけが人間で漫画家の先生も友人たちも編集者もすべて動物として描かれている。しょっちゅう不思議な動物たちが現れて口を利いたりするし。
アシスタントとして就いた漫画家の先生は「いててどう太郎」と名づけられているが、解説によれば板井れんたろうの由で、友人たちというのも知ってる人が見れば特定できるのだろう。今でもマンガを描いているのは「まっちゃん」で、まっちゃんは
ズバ抜けた画力があるのだろう
デビュー後38年プロとして跡切れることなく仕事をしている
今でも時々会って話をする唯一の仲間
まっちゃんて誰だろう。
巻末に特別付録として、単行本未収録作品「人類抹殺作戦」が載っているが、これがアシスタントのときに描いて初めて雑誌に掲載されたものだという。やっぱり才能あるじゃん。
アルコール依存症の経過を描いた「失踪日記」も面白かった。これは日本漫画家協会賞大賞、文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞、手塚治虫文化賞マンガ大賞、日本SF大会星雲賞ノンフィクション部門を受賞している。すごい!
ふだん娘からは私のマンガの読書傾向を軟弱だとからかわれている。たしかに私のヒーキは吉田秋生や南Q太なんかだ。わずかにこの吾妻ひでおが二人の接点と言えるだろう。
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