neutron tokyoで開かれている「東北画は可能か?」を見る


 東京都港区南青山にある地下鉄銀座線外苑前駅に近いギャラリーneutron tokyoで開かれている「東北画は可能か?」展を見る(1月29日まで)。
 東北画とは何か。今回の企画展を主催する東北芸術工科大学日本画准教授の三瀬夏之介が、本展のパンフレットに書いている。

「東北画は可能か?(日本画は可能か?)」この問いは、日本における東北という辺境(世界における日本という辺境)において、その地域名、国名を冠にした絵画の可能性を探る試みであり、地産地消的アートマーケット、東アジアへの展開までを視野に入れた挑戦になる予定で2009年11月に、私が勤務する東北芸術工科大学チュートリアル活動としてスタートした。またそれは「日本」「東北」と一括りにされた風土、価値観の投影に対するローカル地域からの逆襲でもあり、一つの言葉ではけっして括れない様々なグラデーションを辿りつつ、全国から集まったメンバーそれぞれの制作活動を探すたびでもあった。
 東北画といってもそれは旧来の日本画のように画材や制度に規定されるものではない。日本の東北という私たちが縁あって「今」住む「ここ」という場所の歴史的な成り立ち、それと自身の関係性を読み解き、他者に向けて発信すべき必然性のある素材、技法を再選択していた。つまり東北画の「東北」には様々なものが代入される可能性があり、将来的にどこに住もうが、何が起きようが力強くものを生み出していって欲しいという私からの願いでもあった。
(中略)
 正直なところ、明るい未来はまだ遠そうだ。そう、東北画はまったくもって不可能かもしれない。
 でもやるんだよ。

 今回参加しているのは、三瀬のほか同じ東北芸術工科大学準教授の鴻崎正武とチュートリアルメンバーのあるがあく、サイトウケイスケ、塩澤清志、金子拓、多田さやか、藤原泰佑らだ。

藤原泰佑の作品の前で挨拶する三瀬夏之介

三瀬夏之介

塩澤清志


以上2点、土居沙織


以上2点、多田さやか

 さて、「東北画」は成立しているだろうか? まだそれはよく分からない。一見して感じることはここに参加している作家たちの表現が実に多様だということだ。油絵の鴻崎を除いてみな三瀬の門下生にあたり日本画を専攻している。この多様性から三瀬の目指す「東北画」が従来の「〜派」とは異なることが推測される。分からないながらも三瀬を始めとする彼らには強い活気が感じられた。
 三瀬夏之介の個性も興味深かった。三瀬にはカリスマ性がありながらケレン味が感じられないのだ。門下生にとって良い指導者だろう。
 参加しているメンバーの中では多田さやかが特に面白かった。横尾忠則をどう思うか聞くと好きだという。コラージュの方法で制作するのに興味があるらしい。私は多田の作品に宮下誠が紹介した旧東ドイツの画家たち、ネオ・ラオホ、ヴィリ・ジッテ、ヴェルナー・テュプケなどを思い出した。彼らについてはこのブログで触れたことがある。
驚くべき旧東ドイツの美術(2007年4月9日)
驚くべき旧東独の画家ネオ・ラオホの作品(2008年9月5日)
 これらが紹介されている『20世紀絵画』(光文社新書)の著者宮下誠は、残念ながら3年ほど前に急死してしまった。
 ここ数年、東北芸術工科大学の卒業生や学生たちの銀座の画廊での発表には目覚ましいものがある。優れた画家も何人も登場している。美術愛好家として目が離せない大学だ。
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「東北画は可能か?」
2012年1月11日(水)−1月29日(日)
11:00〜19:00(最終日は18:00まで)
月曜定休
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neutron tokyo
東京都港区南青山2-17-14
電話03-3402-3021
http://www.neutron-tokyo.com/
地下鉄銀座線外苑前駅より徒歩8分