東京都写真美術館の「写真の飛躍」展がおもしろい


 東京都写真美術館の「写真の飛躍」展がとてもおもしろかった。添野和幸、西野壮平、北野謙、佐野陽一、春木麻衣子の5人が取り上げられているが、私はとくに西野と北野がおもしろかった(1月29日まで)。
 西野壮平は1982年兵庫県生まれ。2005年キャノン写真新世紀優秀賞を受賞している。西野は世界の様々な都市で街の一角をモノクロ写真で撮影し、数千枚の写真を貼り込んで1枚の都市の写真地図作品に仕上げている。一度見れば誰でも圧倒されるだろう。

 写真は「Diorama Map Tokyo 2004」と名づけられている。東京を撮ったもの。カタログに掲載された同館学芸員の丹羽晴美のテキストから、

西野壮平がつくり出す都市も私たちの視線を攪乱させながら、果てしない時へと誘ってくれる。〈Diorama Map〉は西野が各都市へ赴き撮影したそれぞれ数千枚以上にも及ぶ35ミリのコンタクトシートを手作業でコラージュした写真だ。事前調査から現地撮影、暗室作業、手作業によるコラージュ、複写を経て作品が完成するまで、一都市につき数カ月から1年が費やされる。集積されたひとつひとつの写真が、西野がどのように街を歩き、何と出会い、どのような経験をしたのかを伝えるのだ。

 中央よりやや右下に東京タワーが見える。右上に見える白い丸いものは東京ドームだ。左上には新宿副都心の高層ビル群が見える。ほかに広島市、ロンドン、ニューヨーク、香港、イスタンブール、リオ=デ=ジャネイロ、パリなどが展示されている。
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 北野謙は1968年東京生まれ。2011年東川写真新人賞、岡本太郎現代芸術賞特別賞を受賞している。上の写真は「アニメのコスプレの少女たち34人を重ねた肖像」と題されている。2009年4月18日に台北で撮影された。
 北野が書いたテキストから、

一見一人のように見えるかもしれないが、この作品はある集団のメンバー全員が重なり混ざり合った群像写真である。私は世界中の様々な他者に会いに行き、現場で撮影した何枚もの肖像を、暗室で1枚の印画紙に重ねてイメージを作っている。これらの肖像は数十人の〈個〉が集積化、重層化した共同体のアイコンである。1999年から「our face project」として継続的に続けている。今までに撮影した人々はアジア各地の150余の集団。今後もプロジェクトはアメリカ、ヨーロッパ、アフリカへと私のライフワークとして続く予定だ。

 写真はほかに、「天安門広場を警備する陸軍兵士24人を重ねた肖像」「原爆慰霊の灯籠を流す39人を重ねた肖像」「コモリン峠で日の出を見るヒンズー教徒の巡礼者23人を重ねた肖像」「ブルカを被ったイスラムの女性たち23人を重ねた肖像」「特設野外映画場で映画を見る人々31人を重ねた症状(主に建設現場で働く出稼ぎ労働者)」「2003年3月8日World Peace Now米英軍のイラク攻撃反対5万人パレードに参加して歩く人々30人を重ねた肖像」などが展示されている。これらもきわめて魅力的だ。
 多数の肖像を重ねて作品を作る方法は作間敏宏も行っている。作間はネットで集めた100人の女性のヌードを重ね合わせた作品を個展で展示していた。
作間敏宏個展を見る(2006年12月28日)
作間敏宏展が導くもの(2007年3月2日)
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「写真の飛躍」
2011年12月10日(土)−2012年1月29日(日)
10:00−18:00(木・金は20:00まで)
毎週月曜日休館
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東京都目黒区三田1-13-3
電話03-3280-0099
http://www.syabi.com