森岡純写真展が始まった


 東京京橋のギャラリー檜plusで森岡純写真展が始まった(1月14日まで)。森岡は1949年島根県隠岐島生まれ、もう20年もギャラリー檜で個展を続けている。
 会場に入って左の壁面にカラー写真を100点ほどびっしりと並べ、それに対面する右の壁には大きな白黒の写真が1点だけ展示されている。



 森岡は美術家たちの個展の記録をカラー写真で撮影してきたが、自分の個展ではすべてモノクロで、カラー写真を展示したことはなかった。今回のカラー写真はライカのデジタルで撮られている。白黒はいつものブローニー判のカメラだ。
 森岡にとって作品というのは白黒プリントなのだ。この大きな写真が作品なのだ。構図が完璧に決まってますねと言うと、そうなんだよ、大きく伸ばしたらこんなになっていたんだよ、せめて円錐状のアレが境の線の上に乗っていなければ良かったのに、と言う。
 森岡の写真は必ず構図を狂わせていたり、破綻させていたりする。ふつうの完成した構図は決して採らないのだ。
 森岡は「もの派」の作家たちの作品を撮影することから写真のキャリアを重ねてきた。その過程で「もの派」から大きな影響を受けてきた。森岡の写真が誰とも似ていない独自のものであるのはそのためだ。私は戦後日本の写真を改革した3人の1人だと思っている。他の2人はアラーキー渡辺兼人だ。
 カラーの作品について、森岡はあれは写真じゃないと言う。しかし、森岡がどんな風に被写体を見ているか、森岡の目が何を捉えているかを知るにはとてもいいチャンスだ。いつも大きなモノクロ写真を1回の個展でせいぜい4点くらいしか発表してこなかったのだから。

森岡純写真展を見て(2011年6月7日)
きわめてユニークな写真家・森岡純写真展(2010年8月8日)
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「もの派」について、暮沢剛巳『現代美術のキーワード100』(ちくま新書)より、

1970年前後の日本で展開された美術運動。土、石、木などの素材にほとんど手を加えないインスタレーション制作を中心に展開された。現象学や場所論を理論的支柱とし、また当時の学生運動とも密接に関連している点はフランスのシュポール/シュルファスやイタリアのアルテ・ポーヴェラといった同時代の海外の美術運動とも共通するもので、ミニマル・アートの世界的趨勢の一環を為す動向と位置づけることができる。命名者は不明だが、現在では、当時をよく知る批評家、峯村敏明による「1970年前後の日本で、芸術表現の舞台に未加工の自然的な物資・物体を、素材としてではなく主役として登場させ、モノの在りようやモノの働きから直かに何らかの芸術言語を引き出そうと試みた一群の作家たち」という定義がしばしば参照される。(後略)

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森岡 純 写真展
2012年1月9日(月)−1月14日(土)
11:30−19:00(最終日17:00まで)
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ギャラリー檜plus
東京都中央区京橋3-9-2 プラザ京橋ビル3階
電話03-6228-6558
http://www2.ocn.ne.jp/~g-hinoki


現代美術のキーワード100 (ちくま新書)

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