『日本の原子力施設全データ』を読む

 北村行孝・三島勇『日本の原子力施設全データ』(講談社ブルーバックス)を読む。副題が「どこに何があり、何をしているのか」とある。「はじめに」に本書の目的が書かれている。

 ともすれば敬遠されがちな原子力の基本的な知識をおさらいし、国内にどのような原子力関係施設があり、その役割は何なのかを紹介する……

 裏表紙の惹句から、

炉のタイプ、立地、業務内容を網羅。基礎知識がよくわかる、読むデータブック。

 本書は3.11の10年前に発行されている。第1部が「原子力発電の基礎知識」として、原子力発電とは何か、原子力発電の実際、原子炉の燃料と核燃料サイクルの3つの章からなり、おおまかな基礎知識を得ることができる。自分が原発についてほとんど何も知らなかったことを教えられた。
 第2部が「日本の原子力施設データ」で、商用原子力発電所原子力開発機関・大学・企業の研究炉、核燃料加工・再処理施設について、詳しいデータが表示されている。どこにどんな施設があるか、所在地、敷地面積、連絡先、出力、炉の形式、過去の主なトラブル、働いている人数などだ。
 第3章が「原子力事故と安全対策」、過去の事故の紹介とその対策が書かれている。しかし実際には、10年後に3.11が起こってしまった。安全対策は十分ではなかった。
 第1部の原子力発電の基礎知識が一番興味深かった。原子炉には軽水炉と重水炉、黒鉛炉、高温ガス炉、高速増殖炉があり、軽水炉には加圧水型炉と沸騰水型炉がある。それぞれの特徴が紹介され、いくつかの原子炉の仕組みが図解されている。
 原発について知りたい人には最適の参考書だろう。


日本の原子力施設全データ 完全改訂版―「しくみ」と「リスク」を再確認する (ブルーバックス)

日本の原子力施設全データ 完全改訂版―「しくみ」と「リスク」を再確認する (ブルーバックス)