『週刊朝日』に「マリコのゲストコレクション」という連載対談がある。林真理子が毎回異なるゲストと対談している。今回の相手は『バカの壁』の養老孟司だ(11月20日号)。『バカの壁』(新潮新書)はトータルで440万部売れたという。印税がすでに3億円を超えている。
養老が脳について解説する。
養老 (……)最近、社会脳という言葉を使うようになったんですが、こうやって人の相手をしているときの設定が、脳の本来の設定なんです。林さん、原稿書いているときに話しかけられたら邪魔でしょう。
林 はい、邪魔です。
養老 設定が違うからなんです。人と接するときと、原稿を書いたり本を読んだりして孤独に何かをやるときとでは、使う脳の場所がかなり違う。もともと設定されているのが「社会脳」で、生まれて2日目にはこの設定ができている。お母さんとのやりとりが基本ですからね。
林 ああ、なるほど。
養老 それ以外の、考えたり書いたりする作業の設定は、おそらく後から副作用みたいにできてきたんじゃないか。脳は考えるためではなく、つき合うためにできた。サルでも、大きな社会集団を作る種類ほど頭がよくて、脳が発達しているんです。脳は一人でじっと考えるためのものじゃなくて、こうやって人と接するためにあるんです。
そういえば、信原幸弘『考える脳・考えない脳』(講談社現代新書)でも、脳は反射を蓄積するだけで考えないとあった。考えるのは3つの条件の場合だけ。人と話すとき、紙に書くとき、自分自身と心の中で対話するときだ。例えば計算するときも紙に書くか頭の中で数字やソロバンを思い浮かべている。意識的に考えないと脳は考えないのだ。ただ反射によってデータを蓄積している。
信原と養老を総合すれば、本来の脳の働きは人と接するためにあり、その展開として自己対話や執筆が生まれたと考えられるかもしれない。
- 作者: 信原幸弘
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2000/10
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