『宇宙になぜ我々が存在するのか』を読んで

 村山斉『宇宙になぜ我々が存在するのか』(講談社ブルーバックス)を読む。著者は『宇宙は何でできているのか』『宇宙は本当にひとつなのか』で刺激的な宇宙論を示してくれた。本書の副題は「最新素粒子論入門」となっている。
 私たちの体も宇宙も物質でできている。物質を分けていくと原子に行きつく。原子は素粒子からなっている。物質には必ず電気の性質が反対になる反物質が対応している。素粒子にも反物質がある。物質と反物質が出会うと両方とも消滅してエネルギーになってしまう。しかし現実の宇宙には反物質はほとんど見あたらない。だから我々が存在している。その謎にニュートリノという素粒子が関係していると思われる。本書はこのニュートリノをめぐる不思議な素粒子論なのだ。
 そんな難しい世界を著者はやさしく面白く語ってくれる。読後、このきわめて複雑な素粒子の世界がなんとか理解できたように思える。その語り口の上手さが著者の腕なのだ。本当はそんなに簡単に理解できるわけがないだろう。元来きわめて難しいはずの話なのだから。とはいえ、本書もきわめて刺激的で楽しい読書だった。


宇宙になぜ我々が存在するのか (ブルーバックス)

宇宙になぜ我々が存在するのか (ブルーバックス)