ソニーコンピューターサイエンス研究所の北野宏明が「人工知能が開く未来」というタイトルでインタビューに答えている(朝日新聞、2016年4月9日)。囲碁の世界でグーグル傘下の人工知能(AI)「アルファ碁」が世界のトッププロを4勝1敗で下した。今後はどうなるのか。いま注目されているのが車の自動運転だという。質問者が科学の研究領域で、「AIが自分で大発見するのか」と聞いたのに対して、北野が答える。
可能性はあります。重要なのは、AIが勝手に知識を拡大していくということです。人類の知識の拡大はこれまでになく加速します。そして今、AIのように知識を生み出す機械が登場しつつありその延長では、機械が機械をつくるかもしれません。となると、これまでとは完全に一線を画します。SF的には人間が全く関与しないAI文明が生まれる可能性だってある。
人間の特徴は意識があることだろう。それが動物と人間を分ける点だと思われている。ではその人間の意識はどこからきたか?
極端な例を挙げた方が分かりやすいと思うので、たとえば魚は意識=自己意識がない。しかし魚も危険は察知する。敵と食物をちゃんと見分ける。この自己意識のない「認識」を仮に”亜認識”と呼ぶとすれば、人間の内臓も亜認識を持っている。食物が胃に入れば消化液を分泌して消化する。それを食べ物だと亜認識しているのだ。この亜認識が生命の基本的な対応だと思う。すべての生命にこの亜認識が存在する。それが「進化」して人間のように自己意識を持つに至ったのではないか。この自己意識が知恵に発展していくのだ。
私が言いたいことは人間の意識が特別なものではなくて、アナログのグラデーションのように発生してきたのではないかということ。魚の亜認識がネズミの亜認識に進化し、さらに犬の亜認識に進化する。その先に人間の自己意識があり知恵がある。このように考えれば、AIがやがて自己意識を持ち、その知恵が発展し、主体として独立するようになると考えるのは無理がないのではないか。
AIはきっと人間の知恵や意識を凌駕するだろう。「人間が全く関与しないAI文明が生まれる可能性」がある。そのことに賛成でも反対でももう誰も止めることはできないのではないだろうか。