宇宙〜量子力学〜時間に関する3冊

 村山斉『宇宙は本当にひとつなのか』(講談社ブルーバックス)を読む。副題が「最新宇宙論入門」で、それは本当に驚くべき宇宙の姿だ。最初に「宇宙の構成」という円グラフが提示されている。星と銀河はたったの〜0.5%、ニュートリノ〜0.1−1.5%、普通の物質(原子)4.4%、暗黒物質23%、反物質0%、暗黒エネルギー73%となっている。宇宙のほとんどを占めるのは暗黒物質と暗黒エネルギーだという。そしてそれらは何か分かっていない。
 さらに驚くべきことは、この宇宙は多次元かもしれないということ。時空4次元だと思っていたが、異次元がある可能性があるらしい。さらにさらに宇宙が複数あるという多元宇宙にも言及されている。
 こんな眉唾のような宇宙論が、ベストセラーになった「宇宙は何でできているのか」(幻冬舎新書)の著者によって書かれているのだ。両著ともおもしろいことは請け合える。
 次いで森田邦久「量子力学の哲学」(講談社現代新書)を読んだ。副題が「非実在性・非局所性・粒子と波の二重性」という。これは実に難解で、私は3分の1も分からなかった。「はじめに」から、

 たとえば5章で紹介する「他世界解釈」では、実在性も局所性も守られる(と主張されることがある)が、たがいに干渉しない多くの並行世界が存在するというSF的な世界観が提示される。また、別の解釈では、いまの状態を決めているのは、過去の状態だけではなく、未来の状態でもあるとすることによって、実在性と局所性を守ろうとする。さらに、何が存在するかは、何を測定しようとするかによって変わるという解釈もある。また、私たちは共通の一つの精神(普遍的精神)を共有しているのだという解釈すらある。

 ただでさえ難しい量子力学のその哲学を語っている。難しくないわけがない。
 その後で、橋元淳一郎「時間はどこで生まれるのか」(集英社新書)を読んだ。もうぶっ飛んだ理論が主張されている。量子論のミクロの世界には時間がない、それを敷衍してマクロの世界にも本来時間がなかったとする。世界に時間をもたらしたのが人間だというのだ。人間が時間を創造し、それが宇宙を創造したというものだ。この本ばかりはほとんど同意できない内容だった。ただ、巻末に挙げられている参考文献で、入不二基義『時間は実在するか』(講談社現代新書)、滝浦静雄『時間ーーその哲学的考察』(岩波新書)、渡辺慧・渡辺ドロテア共著『時間と人間』(中央公論社)は読んでみよう。

宇宙は本当にひとつなのか―最新宇宙論入門 (ブルーバックス)

宇宙は本当にひとつなのか―最新宇宙論入門 (ブルーバックス)

量子力学の哲学――非実在性・非局所性・粒子と波の二重性 (講談社現代新書)

量子力学の哲学――非実在性・非局所性・粒子と波の二重性 (講談社現代新書)

時間はどこで生まれるのか (集英社新書)

時間はどこで生まれるのか (集英社新書)