山本弘の作品解説(76)「子供」


 山本弘「子供」、油彩、F10号(53.0cm×45.5cm)
 1976年10月制作。左下に「弘」のサイン。中央に子供が描かれている。浴衣を着ているのだろうか。子供の背景の円が何なのか分からない。円の中が暗く、その外側が明るく輝いているようにも見える。顔の両側に筆の尻で線刻が描かれている。
 キャンバスの後ろに「子供」の文字が書かれていて、これが題名なのだが、山本の文字ではないように見える。山本が亡くなったあと、友人たちが集まって遺作画集を発行した。その制作費用を賄うためもあって、残っていた作品400点ばかりを遺作展として展示して即売した。その際、仲間たちが題名が付されていない作品に題名を付した。「風景」とか「人物」とか「子供」とか。山本はそのような常識的な題名は付けていなかったと思う。もう少し思い入れの強い変わった題名が多かった。キャンバスの後ろに書いてない場合でも、個展の折りはすべて自分でカードにキャプションを書いていた。
 山本は何を描いたのだろう。分かりやすい絵のように見えて不思議な作品だ。