山本弘の作品解説(88)「(題不詳)」

f:id:mmpolo:20190713225729j:plain


  山本弘「(題不詳)」、油彩、F10号(53.0cm×45.5cm)
 制作年1976年9月。中央上部に三角形が描かれているように見える。それは山、それも風越山ではないだろうか。中央下部に描かれているのは山へ向かう道ではないだろうか。道を挟んで両側に描かれている茶色は石垣だろうか。黒い「への字」が重ねて描かれている。
 山本にしばしば見られる構図だ。中央に家や山や行き止まりが描かれ、そこへ1本の道がまっすぐ通っている。山の両側には白い雲が浮かんでいる。道の左側に曲がった十字形が描かれている。これも電信柱かもしれない。
 断酒を始めた1976年の秋、大量に描きまくった「豊穣の年」の作品だ。山本はこの10号の大きさが一番合っていたようだ。残された作品の点数も10号が圧倒的に多い。表面にサインがないが、裏面に「山本弘」と書いている。
 まだ生きていたら、俺の作品に勝手なことを言いやがってと怒られるに違いない。山本さんすみません。明後日7月15日は祥月命日で、生きていたら89歳になる。来月19日から渋谷の画廊で遺作展が始まる。